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◆タイニー・ファニチャー

全てをさらけ出すような「わたしの物語」。それは映画の未来を変えた
  撮影当時、二十二歳だったレナ・ダナムが監督/脚本/主演を務め、若手インディ監督の登竜門となった感があるサウス・バイ・サウスウェスト映画祭でグランプリを獲得した作品が、ようやく日本でロードショーである。

  映画の主人公オーラは大学を卒業したばかり。将来の展望も何もなく、ニューヨークの実家に戻ってくる。実家はトライベッカ地区の洒落たロフトで、半分はアーティストである母親シリのスタジオになっている。シリを演じるのはレナの実の母親で、有名なアーティストのローリー・シモンズだ。元は倉庫街だったトライベッカは、シモンズのような芸術家たちにロフトを安く提供していたという歴史がある。オーラにとってここはかつての自分の居場所ではあるが、自分の世代の表現者が手に入れることの出来ない豊かなニューヨークの象徴であり、母親のキャリアの軌跡なのである。将来像が定まらないオーラは家にいても、心が休まることがない。

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  キャノンのイオス7Dで撮られた低予算映画だが、白いロフトの構造を上手く使っていて室内シーンの映像は見応えがある。時に間取りがスプリット・スクリーンのような役割をして、家族の輪から外れ、行き場をなくした主人公の居心地悪さが画面から伝わって来るのだ。

  一方、ロフトのフレームに無理やり押し込まれたような、ふくよかなレナ・ダナムの感情表現や身体性、身振りといったものは生々しさに溢れている。ここにはビルドゥングスロマン的な、主人公の分かりやすい成長の道筋というものはない。自分が人生に何を求めているか分からず、オーラは迷走を続ける。性的な関係もない男に居候を決められ、ようやくありついたレストランの仕事も中途半端に投げ出し、友人と約束していた移住計画や将来設計に二の足を踏む。全てはレナ・ダナム本人が撮影時、ほぼリアルタイムで経験したことだ。それを映画にする彼女の大胆さに感服する。全てをさらけ出すような「わたしの物語」の語り口とその映画としての成功は、この後の女性映画/ドラマに大きな影響を与えた。この作品のオーラの小さな一歩は、映画の未来でもあるのだ。

(山崎まどか)


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