劇場公開日 2018年9月22日

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「タイの正義と人間の正義の間で揺れるリン」バッド・ジーニアス 危険な天才たち つとみさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5タイの正義と人間の正義の間で揺れるリン

2024年3月19日
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鑑賞方法:DVD/BD

ストーリーが面白い上に凝ったショットや、少し時間軸をいじる構成、音楽など、楽しませる工夫が満載で、そこから生まれるスリリングさは最早クライムサスペンスのそれである。タイ映画らしいコミカルさを僅かに残しているのもいい。
緻密な犯罪計画を立てるが実行する能力は素人レベルというアンバランスもスパイスとして効いている。
あと一押しあればオールタイムベストに選出するレベルで面白かった。
しかしその一押しは私のわからないところに存在していたようで、少し残念。

観終わって、これはもしかしたらタイの格差問題を扱っているのではないかと考えた。調べてみたところ、やはりタイの格差はかなり問題なようだ。あとは教育問題もかな。

主人公リンは父親の負担だけを考える優しい人だった。それが裕福な家庭の生徒ばかりが通う学校に学力を買われ入学したことで変わり始める。
学校は寄付という名のワイロを受け取り、裕福な家庭の親や子は物事を全て金で解決しようとする。挙げ句の果てには自分さえ良ければあとはどうでもいいという態度なのである。
そんな中にあってリンは自分の能力である学力を使いお金を稼ぎ、その事で常に悩み続けるが、咎められる事は中々受け入れられない。
金で利益を得る者が正義ならば、学力で利益を得る者だって許されるはずというわけだ。
つまり、現実のタイに対して逆説的に、ズルしたヤツが富を得ることが当たり前の正義のような社会はおかしいだろと突きつけているのだ。

この作品にはお金持ちの子か高い学力を持つ子しか出てこない。
作品に登場しない金も学力もないが誠実な普通の人々。搾取され虐げられている普通の人々。そんな普通のタイ人を代弁するような作品で、観ている間に理解できていればもっと楽しめたろうに。

とまあ、これが私にとっての最後の一押しだったわけだが、タイの社会問題まで知識はなかったので仕方ない。
とりあえず、余計な知識などなくても充分過ぎるほど面白いから。

誰も銃を所持していないクライムサスペンス。

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つとみ