劇場公開日 2018年6月8日

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「斬新な視点で描く家族の在り方」万引き家族 みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5斬新な視点で描く家族の在り方

2022年3月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

正直、驚いた。今まで、こんな家族なんか観たことなかった。私の家族感は崩壊してしまった。本作は、極めて日本的な雰囲気で究極の家族を描いた是枝監督の渾身作である

訳あり5人家族は、祖母・初枝(樹木希林)の年金を当てにして、万引きを生活の糧にして昭和レトロ感溢れる一軒家で暮らしていた。ある日、浩(リリーフランキー)は、寒さに震えている子供・じゅり(佐々木みゆ)を見過ごせずに家に連れていく。妻の信代(安藤サクラ)はじゅりの腕の傷をみて引き取ることにする。その日を境に、家族の生活は徐々に変化していく・・・。

じゅりを加えた6人家族は貧乏だが、いつも明るい雰囲気で本音を言い合っている。演技巧者を揃えた家族の会話は、本当の家族の日常を切り取ったかのように自然で生々しい。明日はどうなるか分からない。だからこそ、彼らは、今日を悔いなく懸命に生きている。それが彼らの明るさの理由だろう。

大人4人は純粋な善人ではない。一癖も二癖もあり狡賢い面を持ち合わせている。そんな4人が紡ぎ出す家族の絆は生々しい。家族の絆は家族になれば自然にできるものではない。互いを強く想って築き上げるものだという作品メッセージに心揺さぶられる。また、本作は幼児虐待という今日的なテーマも取り入れている。幼児虐待に対する信代の台詞には説得力がある。粗野だが、全身全霊で子供を守るという強い母性が感じられて胸が熱くなる。安藤サクラの決意を滲ませた演技が秀逸。

終盤、ある事件が発覚し、そんな家族はバラバラになり独白という形で一人一人の過去と家族への想いが語られる。特に信代と翔太の台詞が、この家族の素晴らしさを端的に現わしていて心洗われる。安藤サクラの抑制の効いた凄味ある演技が出色。

本作は、打算による相互依存でできただろう家族が、毎日を共に懸命に生きることで、互いを思い遣る気持ちが芽生え、徐々に絆を深めていく物語である。斬新な視点で描いた家族の在り方が心に突き刺さる秀作である。

みかずき