劇場公開日 2018年6月8日

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「リテラシーの判定に」万引き家族 mos89さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0リテラシーの判定に

2019年5月17日
PCから投稿

この映画に冷評をつける人のレビューでもっとも多いのが、親が子どもに万引きさせるのは、いかんじゃないか、という倫理への非難です。
しかし、それは言うまでもないことかと思います。

滔滔と倫理を説かれ、ひょっとしたら映画レビューを通じて、自らの正義感を披露しているのでは?と思えるのものもありました。映画レビュー枠を利用して「私は万引きを許さないモラリストです」と主張するのは、いささか効率の悪い自己主張ではないでしょうか。
また、それを言うなら、根本的に、深作やタランティーノの映画を好きなら、暴力を肯定することになってしまう、かもしれません。

もちろん、映画をどう見ようと個人の自由です。
個人の自由ですので、言ってしまうと、万引き家族に倫理観を持ち出すのは、映画を見慣れていない人の意見だと思います。
もちろん、映画を見慣れている人は、映画を見慣れていない人に比べて、優れているわけでも偉いわけでもありません。ぜんぜん、どっちでもよいことです。
ただ、さまざまなレビューを読んだり、身の回りの意見を聞いて、この映画をDegradeする人は、どちらかといえば映画を見慣れていない人に多い、と思ったのです。

NewsWeekでこの映画の海外の高評価を説明するコラムを読んで、納得したことがあります。
それには、(海外においては)文芸映画を見る人種/層だけがこの映画を見たから(高評価だらけになった)、とありました。反して日本では、話題も手伝って、様々な層の人々、普段映画を見ない人も見たから、過度な酷評もあらわれた──という説明でした。
なるほどと思いました。

個人の自由ついでに言うなら、映画をレビューするばあい、映画を見慣れていることは、あるていど必要だと思います。見慣れている人が見れば、この映画への倫理批判は、お門違いですから。
つまり、これに倫理うんぬんする人は、カーレースの客席から、レーサーたちのスピード違反に腹を立てているようなもの、です。

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mos89