劇場公開日 2018年9月28日

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「邦題に「アジアンズ」は入れて欲しかった…。」クレイジー・リッチ! yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0邦題に「アジアンズ」は入れて欲しかった…。

2020年6月14日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

本作の原題では、『クレイジー・リッチ』に続いて「〜アジアンズ」と続きます。確かに想像もできないほど裕福な一族の豪華な生活を題材にした物語ではあるものの、現在の邦題では、アジアの新興経済大国が米国や欧州を圧倒しつつある、という重要な時代背景が見えにくくなっており、内容の薄いコメディ映画であるかのような印象を与えてしまっています。内容の面白さを考えると実にもったいなく、ここは原題通りにして欲しいところでした。

本作で印象的に用いられる「バナナ」という語は、外見はアジア系だが生活形態や思考様式が欧化した人々を指しており、コンスタンス・ウー扮するレイチェルはまさにその典型であるとして、シンガポールにいる恋人の家族から厳しい視線を向けられます。

世界の金融センターとして成長を遂げたシンガポールという国自体が、積極的な欧化で力を付けてきた「バナナ」のはずなのですが、そこに住む人々は、家族主義といった伝統的価値観を維持しているという自負があるようです。では新興富裕層でありつつ家族主義を維持するところに「選択の自由」はあるのか、という問いが続いていくのですが、その家族主義を背負って登場するのがレイチェルの恋人の母親、エレノアです(ボンドガールを務めるなど、むしろアジア系俳優のハリウッド進出に積極的に貢献してきたミッシェル・ヨーが演じている点が興味深いです)。レイチェルとエレノアの関係性はまさに、「選択の自由」を巡る対立の具体化だと言えます。

本作は出演者の多くをアジア系としている点に注目が集まっていますが、続編の賃金格差を巡って脚本家が降板してしまいました。まだ映画界に存在する見えない壁は高く、厚いようです。

本作と『レ・ミゼラブル』を同日に鑑賞するという希有な選択をしたため、主人公の境遇のあまりの違いに無情を痛感すること甚だしかったです。

yui