劇場公開日 2019年1月26日

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天才作家の妻 40年目の真実 : 映画評論・批評

2019年1月15日更新

2019年1月26日より新宿ピカデリー、角川シネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほかにてロードショー

モヤモヤと葛藤する女の心境を見事に演じたグレン・クローズ、圧巻なり!

祝・ゴールデン・グローブ賞主演女優賞! 71歳、円熟してなお輝くグレン・クローズが本作の最大の見どころだ。本年度オスカー候補の呼び声も高い。

悲願のノーベル文学賞を受賞した作家ジョゼフ(ジョナサン・プライス)。結婚40年、彼を支え続けた妻ジョーン(グレン・クローズ)も感慨深げだ。だが、授賞式が近づくにつれて妻の様子がおかしい。そこには夫が隠している「秘密」があった――。

秘密」とはいったいなんなのか? 夫の不貞? もしや盗作疑惑?! とミステリーを期待するが、間にはさまる妻ジョーンの回想で、ネタは割と早々にあがる。ジョーンはかつて、駆け出しの作家だった夫と「教授と教え子」として知り合った。そしてジョーン自身も、当時は文章を書いていたのだ――。

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「ノーベル賞」という題材は特異だけど、長年連れ添ったパートナー間には多かれ少なかれ「こういうことってあるよね」と思える話だ。「片方が片方を喰った」「犠牲になった」と感じることで生じる亀裂と溝。その不満は、あるきっかけで堰を切ってあふれ出す。この場合はノーベル賞というあまりに大きな名誉が、妻の感情の蓋を吹き飛ばしてしまったのだろう。果たして妻は夫のゴースト・ライターだったのか? いや、最高の名誉を前に妻の記憶も歪められているのかもしれない。その「秘密」こそが、最大のキモだ。

晴れ舞台となるストックホルムに到着し、フラッシュを浴びる夫の脇で、表に出せない感情と格闘する妻。ゴージャスなホテルでもパーティ会場でも「なんか、モヤモヤ、イライラする!」な女の心境を見事に演じたグレン・クローズ、圧巻なり。

さらに驚くべきは回想シーンで若き日のジョーンを演じるアニー・スターク。「ちょっと美人すぎない?」と思いつつ、どこか似てる気も・・・と感じていたら、なんとグレン・クローズの実の娘! 女優の年輪を目の当たりにするのもまた一興。

中村千晶

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