劇場公開日 2018年5月26日

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「精神面のサドマゾ」ファントム・スレッド お水汲み当番さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0精神面のサドマゾ

2020年7月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

淀川長治さんが存命だったらこの映画をどう解説するか。
その身振り手振り口調までが頭の中で蘇ります。
まあ怖い怖い愛情って怖い物語です。

主人公は、服飾デザイナーの天才。
王室までも顧客に抱える有名人です。

しかし実は他人に対する支配性向が極限まで強い「人格障害者」で、次々に女を取り替えるが、単に支配の対象にするだけであり、興味があるのは女の外見だけで、愛情など感じたこともないという独身主義者の老人です。

唯一、彼を理解しているのが実の姉。
人格障害者の共犯者として、奇妙な同居生活を許しています。

……とまあ、こういう設定を見ただけで、観たくない、って人が出てきそうな映画でした。

支配性向が極限まで強い人格障害者に、生まれて初めて「愛情」を感じさせた女性が行ったこととは何か。
なかば見せつけるように、何をしたのか。

好きという感情と、恐怖という感情が、実はごく近いところ共通の根を持っているのかも知れぬと示唆する作品です。

それにしても、怖い怖い愛情を描いた映画でした。

私にはドレスを見る審美眼がないので、「凄いのだ」、と言われれば、きっと凄いのだろうとしか理解できないものの、彩る音楽の美しさには心動かされ、この音楽を聴くだけでも映画料金の価値は充分にあると思います。

お水汲み当番