劇場公開日 2018年3月30日

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「チャーチルが学んだ古代ローマの誇り」ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男 琥珀さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0チャーチルが学んだ古代ローマの誇り

2018年4月1日
iPhoneアプリから投稿

『カエサルがドーバー海峡を渡った時から大英帝国の歴史は始まる』
ノーベル文学賞を受賞するほど歴史や伝記にも造詣の深いチャーチルが書き残した言葉だそうです。

大英帝国を築いたイギリスはローマ帝国衰亡史のギボンまで生んだほど、『帝国の運営』についての関心が高く、チャーチルの思想や決断にもその文脈は息づいていた、ということかも知れません。
ローマ史研究の本村凌二氏の著書の中に、カウディウムの頸木(くびき)というエピソードが紹介されていて、ローマ軍が負けた時に『敗北を認め、服従の意を示す儀式を行うこと』という講和条件を一度は受け入れたが、指導層も兵士も一般市民もリベンジを果たすまで30年もの長きにわたり、その屈辱を糧にしていた、というローマの誇り高き執念を示すものです。
博識のチャーチルは古代ローマの栄光の歴史から学び、屈辱となるであろう講和条件を議論するくらいなら、始めから戦うことを選んだということなのだと思います。地下鉄車内で一般市民の声を聞いたのは、自分が率いる大英帝国も古代ローマと同じように全国民が誇り高い気概を持っているはずだ、ならば戦い続ける、という判断に自信を得たかったからではないでしょうか?

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