劇場公開日 2017年12月2日

COCOLORS : 特集

2021年10月29日更新

「妥協は死」が社訓のアニメーションスタジオが思うままにつくった珠玉のディストピアSF

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話題の映画を月会費なしで自宅で鑑賞できるVODサービス「シネマ映画.com」。本日10月29日から、中編アニメ映画「COCOLORS(コカラス)」の独占配信がスタートしました。

同作は、先日「Disney+」で配信が開始されたアンソロジーアニメプロジェクト「スターウォーズ:ビジョンズ」の1作「The Duel」など、個性的な作品を手がけるアニメーションスタジオ・神風動画が自主製作した46分のオリジナル作品です。テレビアニメ「ジョジョの奇妙な冒険」第1~3部のオープニング、ミュージックビデオ、PVなどエッジの効いた短編の名手として知られ、近年では初の長編劇場アニメ「ニンジャバットマン」、声優シャッフルが話題となったTVアニメシリーズ「ポプテピピック」を手がけるなど活動の幅を広げています。

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国内外で高く評価、オンライン上映のみのスペシャル映像も

「妥協は死」が社訓(ただし残業や徹夜をしない働き方と両立)で、凝りに凝った映像で見る人を魅了してきた神風動画。そんなユニークなアニメーションスタジオが、自社の資金で「売れること」や「クライアントやファンに喜んでもらうこと」を気にせず思うままにつくったのが「COCOLORS」です。2017年に封切り後、東京・下北沢トリウッドをはじめとするミニシアターでロングラン上映され、18年に文化庁メディア芸術祭優秀賞を受賞。海外映画祭でも多く上映され、第21回ファンタジア国際映画祭で最優秀アニメーション賞にあたる「今敏賞」を受賞するなど高い評価を受けています。

長らく劇場でしか見られない作品として展開され、昨年、期間限定で販売されたブルーレイも現時点では入手できない今、「シネマ映画.com」で4週間限定の配信で見ることができる貴重な機会です。作品冒頭には、オンライン上映でしか見られない短いスペシャル映像が追加されているのでお見逃しなく。

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“朽ちた世界”が広がる魅力的な地下世界

【あらすじ】人体を融解させるバクテリアを含んだ有害な灰が空と地上を覆い、人々が巨大なマスクと防護服で身を守りながら、地下深くに作った街で暮らす世界。そんな環境で育った2人の少年アキ(CV:高田憂希)とフユ(CV:秦佐和子)は、いまだ見たことのない「空」に憧れを抱いていたが、やがて外の世界の現実を知り、成長していく。


作品の舞台は、人間が地上で暮らせなくなったディストピア世界。地下、廃墟、瓦礫、ダクトやパイプなど好きな人にはたまらない要素が満載で、一度見ただけでは堪能しつくせないほど魅力的な“朽ちた世界”が広がっています。深層部は人間の内臓をイメージしたという地下の世界づくりには、首都圏外角放水路や日比谷共同溝、栃木・大谷石資料館、建築家の新居千秋による建造物なども参考にされ、背景美術のもととなる線画は鉛筆で描かれています。

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伝統的な木版画にヒントを得た特異なビジュアルも大きな見どころです。通常アニメーションでは塗りつぶす背景の主線をあえて残し、近年注目を集める新版画の吉田博や川瀬巴水の作品を参照しながら、精緻な木版画が動くかのような新たな映像表現に挑戦しています。

また、主人公たちの衣装や地下の住人があがめる御神体は、造形作家の鎌田光司氏が実際に立体物として制作し、それを絵におこすという一風変わった方法でデザインされています。

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マスクを被り「顔色」が見えないキャラクター、動きだけで心情を表現

「COCOLORS」に登場するキャラクターは潜水マスクのようなものを被っていて、喜怒哀楽の表情を見ることができません。今の3DCGアニメの技術でキャラクターに表情をつけることは可能ですが、そこをあえて封印し、ちょっとした仕草や繊細な動きでキャラクターの性格や心情を表現しています。

キャラクターの顔色が見えないことで、声優による演技も口の動きにあわせることなど気にせず幅が広がります。「COCOLORS」は効果音のみの映像を流しながら、声優とミュージシャンが声と音楽をリアルタイムであてるLIVE版として発表された後、一部キャストや音楽など変更した完全版として劇場公開されました。17年に行われた東京公演の一部を無料アプリ「タテヨコ」で見ることができます。

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こんな作品が好きな方にお勧め「第9地区」「JUNK HEAD」「AKIRA」「BLAME!」

「COCOLORS」は商業アニメとアートアニメの中間ぐらいに位置する作品です。エンタテインメントでありつつ、見る人に考えさせる余白を大きく残したインディーズ作品らしい手触りがあり、普段アニメーションを見ない映画ファンにもお勧めできます。

類似作品を挙げるのは難しいですが、今年3月に公開されたSFストップモーションアニメ「JUNK HEAD」、ニール・ブロムカンプ監督「第9地区」、大友克洋監督「AKIRA」「スチームボーイ」、漫画家の弐瓶勉氏原作の「BLAME!」「シドニアの騎士 あいつむぐほし」などが好きな方には特にお勧めできます。

「COCOLORS」の監督・脚本を務めた横嶋俊久氏は、「ドラゴンクエスト」シリーズ、「ファイアーエムブレム 覚醒」など、神風動画が制作したゲームムービーのディレクションを多く手がけてきたクリエイターです。ゲームが好きな方にも、きっと楽しんでいただけると思います。

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