劇場公開日 2018年6月22日

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「真(まこと)と真の闘いが熱い」天命の城 ピラルクさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5真(まこと)と真の闘いが熱い

2018年7月8日
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鑑賞方法:映画館

知的

難しい

この映画には原作があり作家は金薫(キム・フン)。2005年に『孤将』という作品が日本語に訳され大抵の図書館に置かれるぐらいには売れたようだ。日本語で読める作品はその一冊のみながらamazonのカスタマーレビューは21件もあり(2018/7時点)星の数も悪くない。なにより熱く褒めているレビューが目立つ。そして感想のいくつかはこの映画と共通した内容に思われた。
思うにこの作家の主題はもう完成されているのだろう。重くて極限的でブレようがないところに行き着いている。

物語は朝鮮と清の戦いを描いているが、それ以上に真(まこと)と真の闘いが描かれていた。一国の王たる者、尊厳を護って討死をも辞さないか、あるいは王朝といえどもまずは生きながらえてそのうえで果たすべき務めを模索すべきか。いずれも真。どちらもひとつの生き方。
矛盾という語は、最強の矛で最強の盾をついたらどうなるか、というのが語源だが、まさにそれ。強敵清が大軍を寄せて風前の灯である城の内、哲理の戦場で最強の矛と最強の盾が激しく刃を交わす。真は刃こぼれしない。真は傷ひとつつかない。しかし真を代表しているのは二人の忠臣。生身の人間である。彼らは血を流し涙を流す。朝鮮と清の対立を背景にして、この対立が一層際立つ。

戦争を繰り返してきた人類史を鑑みても、この対立に決着はつけようないのでは?と観ながら思っていたけど、ラスト、子供の遊ぶ姿は明確な答えだった。
映画『あの日の声を探して』だったか。「子供一人助けられないでなにが国連よ」の台詞が脳裏に浮かんだ。「子供一人の生活を守れなくてなにが国の営みよ」である。

『孤将』読んでみよう。馴染みのない漢字が並んだ固有名詞が多くそこが壁らしい。この映画は漢字の代わりにカタカナだった。目に馴染まない並びのカタカナで辛かった。漢字だったら何とかならないかとぼやきたくなったろうけど、カタカナだと記憶力の足りない自分が悪いと認めざるを得ない。

ピラルク