劇場公開日 2018年1月13日

「未来の河瀨監督?」わたしたちの家 いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0未来の河瀨監督?

2018年1月27日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

難しい

多分、今の映画界で一番フロントラインに立っている監督が河瀬監督なのだろう。勿論他にも優れた女流監督がいることは前提での話で、自分のようなズブ素人が見聞きするレベルでのマスコミへの露出度を元での考察である。そして想像だが、女流監督の卵達が目指している憧れであろう。
東京芸術大学大学院映像研究科映画専攻修了作品と、長ったらしい権威の今作品は、それでも権威に臆せず果敢に実験的プロットにて制作されたものである。それは、上映後のトークショーでしきりに登場したキーワード『ポリフォニー』と『パラレル』いう表現方法を利用したことである。異なる二つのストーリーが同一の舞台装置で展開されてゆく。有りそうでなかった技法での作品は、なるほどかなり実験的であり、アカデミカルではある。今作はそういうチャレンジ作であるが故、その二つのストーリー自体は完全体ではないし、実際、フリの回収は殆ど行なわれていない。多分その部分は作品にとっては重要ではないのであろう。登場人物が実際どんな人間で、どんな思いで、そして何を成したいのか、そこは敢えて観客に全投げしてしまっている。そういう意味では当然ながら商業映画ではないので、突っ込みを入れることは野暮である。ただ、それならば正規料金を取ることへの配慮も必要だったのではないのだろうかと思うのは、自分のケチさ加減が極まったが故である(苦笑
技法としては大変興味深く、もっと膨らませれば複雑怪奇な映画が作られるのではないかと、未来を予感させる作品である。
追伸:全く関係性のない併行世界であることへの潔さと、だからこそ観客がその関連性を勝手に結びつけようと意識してしまうという心理を利用している点も大胆である。

いぱねま