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◆バトル・オブ・ザ・セクシーズ

性別を超えた"自由"のため戦うヒロインをエマ・ストーンが繊細に、誠実に表現
  「ゲティ家の身代金」を再撮影するにあたり、ミシェル・ウィリアムズの報酬が一説によるとマーク・ウォールバーグのわずか1500分の1という"男女賃金格差"が問題になったことは記憶に新しい。「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」が描く、1973年に実際に行われた全米女子テニスチャンピオンのビリー・ジーン・キング(エマ・ストーン)と元男子チャンピオンのボビー・リッグス(スティーブ・カレル)の試合の発端もまた、女子の優勝賞金が男子の8分の1しかないことにあった。

  ビリー・ジーンの「チケットの売上は同じなのだから賞金も同額にすべきだ」という抗議を、全米テニス協会の責任者、ジャック・クレイマー(ビル・プルマン)は、「男には養う家族がいる」「男子の試合のほうが速くて強くておもしろい」という、男性優位の偏見に満ちた理由で拒絶した。全米テニス協会の試合をボイコットし、女子テニス協会を設立することを宣言したビリー・ジーンに、ジャックはニヤニヤしながら「美女を失うのは惜しい」と言い放つ。実にわかりやすい男尊女卑的思考回路を持った権力者だ。

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  一方、ビリー・ジーンが対決するボビーのキャラクターはもう少し複雑だ。55歳になり表舞台からは遠のいているが、シニア選手としては現役だ。資産家の妻に頭が上がらず(自宅のリビングには妻の大きな肖像画だけが飾られている!)、隠していた賭け事が妻にばれて離婚の危機にある。崖っぷちの彼は、世間の注目を集めて妻の愛を取り戻すために、"男性至上主義のブタ"を名乗り、ビリー・ジーンに試合を申し込む。ピエロのように明るく振る舞う表の顔と、自分ですら気付いていない心の闇を抱える人物像は、ひとえにスティーブ・カレルの洞察力と演技力の賜物だろう。

  本作における重要な軸に、ビリー・ジーンのセクシャリティの目覚めがある。夫を愛しているのに、美容師のマリリン(アンドレア・ライズボロー)に惹かれる自分を止められないのだ。悩みながらも、男対女ではなく、人はみな自分らしく自由に生きるべきだという結論にたどり着くビリー・ジーンを、エマ・ストーンが繊細に、そして誠実に表現する。

  ボビーは「男は女よりも優秀である」ことを証明するために、ビリー・ジーンは、「どちらが上とか下とかではなく、女性に敬意を払ってほしい」という願いを込めてコートに立つ。クローズアップやカット割りをせず、テレビ中継と同様の固定カメラでコートを縦に捉える白熱の試合シーンは、できれば試合結果を知らない状態で観てほしい。

(須永貴子)


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