劇場公開日 2018年3月17日

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「90歳の 味ある "スワンソング" ♪」ラッキー(2017) レオンさんの映画レビュー(感想・評価)

4.090歳の 味ある "スワンソング" ♪

2023年11月22日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

90歳ハリー・ディーン・スタントンのまさにスワンソング(遺作)。 全編、味のある描写が続き、ゆったり進行にも関わらず見入るシーンが多々。

冒頭、このシーンをよくスタントンは撮らせたな・・ と感銘してしまう。 ブヨブヨと皮がだぶついた二の腕、しわの入った貧弱な上半身、に対して下腹部が出た老人特有の哀れな姿・・。 オマケに鼻からは鼻毛も出ている・・。

スタントンは特にハンサム俳優ではないが、カッコイイおじさんの一人として、数々の名演を残した一人。
「パリ・テキサス」「グリーンマイル」「エイリアン」等々
それが、もう飾る物はなにも不要なのか、老いれば皆こうなると諭しているのか、虚栄心など微塵も感じず、自らの醜い体を、平気で晒している。

と、見入るシーンから、ごく日常の行動が綴られる。 カフェでクロスワードパズルを楽しみ、夜は馴染みのバーで、顔見知りと語り・・。
何気ないシーンだが、年期の入った人物の行動は、なにかしら魅力があり、それが今作の見所になっている。

バーでの哲学的な会話はよく理解出来なくとも、彼がやや議論好きで、主婦の井戸端会議的な軽い会話にはあまり興味が増さないタイプと示しているようだ。
誘われた子供の誕生パーティーでは、予想外の"特技" を披露したり、親友を貶めていると感じたら、自分よりはるかに若い者に勝負を持ちかけたりと、なかなかスパイスが効いたシーンも多い。

そして、私が一番気に入ったのは、この作品の顛末に、人の死を利用していない事! 映画は、終盤に主要人物の死でその作品に重みを増している場合が多い。 私は安易な脚本に感じて、あまり好きではないのだが、今作はラッキーは勿論誰も死なない♪
そして序盤で、行方が分からなくなった物が、ゆったり・・・。

ラッキーの最後のシーンも、○○顔で締める。
私の様に、若手俳優には余り魅力を感じず、歳を重ねて人格が顔に表れた様な役者が好きな方には特にオススメ♪

尚、スタントンは今作を撮り終えて公開された年に亡くなっているので、まさに人生最後の大仕事。 おそらく本人は役者冥利を大きく感じながら演じていたのではないかと♪  南無・・・。

レオン