劇場公開日 2018年7月27日

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「社会派グライムサスペンスの傑作」ウインド・リバー 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5社会派グライムサスペンスの傑作

2023年12月24日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD、VOD

2017年作品。
緊迫感が最後まで持続し、ラストの銃撃戦の迫力が凄まじかった。
ハンターのコリー(ジェレミー・レナー)は、16歳の娘を
惨殺された過去を持つ男。
ネイティブ・アメリカン保留地ワイオミング州のウインド・リバーで
起こった少女レイプ殺人事件。
殺害現場に呼ばれたのは新米のFBI捜査官ジェーン
(エリザベス・オルセン)は、いかにも頼りない若いお姉ちゃんだった。
しかしジェーンは見かけに寄らないガッツの持ち主で、
「警察権があるのは私(FBI)だけ・・・」
そして検視官が現れて、死因は、
マイナス30度の雪原を裸足で全速力で走った事により、
肺が冷気を吸い込み破裂した事で、
血を吐き、その血を吸い込んだことによる窒息死。
事故であって殺人ではないと所見を述べる。
「殺人事件と書いてくれないと、私(FBI)は上司に今すぐ帰される!」
ジェーンはそう粘る。
同じ女性として耐え難い事件だと思ったのだ。

なぜ少女は裸足でマイナス30度の雪原をで血を吐いて死んでいたのか?
真相は実に単純。そして許し難い。

ウインド・リバーはアメリカ政府がネイティブ・アメリカンを
作物も育たない辺境に追いやり、本来彼らのものだった土地を奪った。
奪われたのは「土地」だけではなく、「生き甲斐や、働く意欲」もだ。
見捨てられた土地と見捨てられた人々。
最後のテロップで「ネイティブ・アメリカンの女性失踪者の統計は
一切ない・・・統計を取ってていない」と明かされる。

見捨てられた人々、その飼いならされたネイティブ・アメリカンの
表情が悲しい・・、
ジェレミー・レナーとエリザベス・オルセンの好演が
心に残る名作でした。

琥珀糖