デイアンドナイトのレビュー・感想・評価
全94件中、41~60件目を表示
善と悪はどこからやってくるのか。
重厚な美しい映画で、その世界観にどっぷり浸かった。
阿部進之介さん、安藤政信さん、清原果耶ちゃん、役者さんの演技も素晴らしかった!
善と悪はどこからやってくるのか。
何が善で、何が悪なのか。
それを、この映画を何度も観て、自分自身に一生問い続けたい。
なかなか言葉に出来ないくらい頭の中がぐちゃぐちゃになる。 何が善で...
なかなか言葉に出来ないくらい頭の中がぐちゃぐちゃになる。
何が善で何が悪かなんて簡単に測ることは出来ない。
こういう重厚な映画を待っていた。
ぜひ多くの人に観て欲しい!
ストーリーはイマイチだけど主演の演技が印象に残る
淡々と進むストーリー展開で、結構長い上映時間。ずっと重苦しく薄暗いので、退屈に感じてしまったのが正直なところ。田舎の閉鎖された生活空間における人間関係やしがらみは、都会でしか暮らしたことのない自分にはなかなかピンとこなくて難しい・・・。全部筒抜けでだいたい知り合いみたいな地域で暮らすのは、良いこともあるけど生き難い部分もたくさんあるんだろう。
作品としては好みじゃなかったのですが、主演の阿部進之介さんが良かったです。東京から地元にやむを得ず戻って来て、自分のせいじゃないけどどうしようもない事を背負い、静かにもがいている姿が、観ていて苦しかった。
回り、そして巡るもの
復讐の先に何があるのか。
大切な人を守って何が残ったのか。
奈々の問いかけが重くのしかかる。
善と悪の線引きの曖昧さや難しさを、つい考えてしまいがちだが、実は、その背景にある動機付けと、伴う結果が問われているのだ。
家族のため、愛する人のため、孤独な子供達のため、多くの従業員のため、生活するコミュニティのため、正義のため、様々な動機付けがもっともらしく語られても、それによって行われるものが、復讐や違法な行為であれば、その結果には虚しさが伴う。
奈々への贖罪で北村は罪滅ぼしが出来たのだろうか。
奈々は幸せになったのだろうか。
明石の復讐を父は喜んだろうか。
残された家族はどうだろうか。
孤児院の子供が、違法なお金で守られていたと知ったら喜ぶだろうか。
幸福な大人になれるだろうか。
隠蔽で守られた従業員は安心だろうか。
「そんなことはない」という答えは簡単だが、どこかに、やるせなさや虚しさが残る。そして、明解な解答が見つからないまま、過ごすしかないのだ。
僕たちは、そんな答えがあるようで、また、確信も持てない曖昧な世界に生きているのだ。
昼と夜が表裏一体であるように。
風車のように回り、そして巡って、また、同じ所に戻るように、答えを求め続けるしかないのだ。
作品の意図は面白かったのですが...
自殺した父親の秘密を探るうちに、昼は孤児を世話する善行、夜は自動車泥棒の悪業を重ねる闇のグループに深く関わることになってしまう主人公(明石幸次)に纏わる社会派ドラマ。善行を施すにはお金が必要ですが、そのお金を得るためには何をしても良いのか?と言う重たい問題を問いかける矛先はなかなか鋭いものがあると感じました。「清濁併せ呑む」と言えば、度量の広さを褒める様な肯定的なニュアンスがありますが、一人の人間が右手で善行を、左手で悪業を行うとなると話は別。やはりそれを正当化するには無理があります。しかし、大なり小なり私達は似たようなジレンマを抱えながら、何とかその中間を掻い潜ろうとあくせくしているのが現実ではないでしょうか?その意味で本作のテーマは、少し直球過ぎて扱いに困ってしまうのですが、私達の日常の本質を突いているような気がしました。ところでこの作品では幾つか不自然に感じられる演出が気になりました。地方の小都市(おそらく東北)が舞台の筈なのに、毎夜毎夜自動車泥棒をしてもばれなかったり、盛り場がやけに大きくて盛況だったりする点は兎も角としても、闇のグループを率いる北村亡き後も孤児院が何の変りも無く運営し続けられるのは何故でしょうか?資金に余裕があったのなら自動車泥棒など続ける必要も無かった筈ですし。作品の狙いはとても面白かっただけに、偉そうなことを言うようですが、もう少しリアリティがあれば文句なしだと思いました。
山田孝之としては大人しいかな
映画としてのまとまりはしっかりしていた。テーマも善と悪の境目は何か、何が悪で何が善か、など、色々な形で問いかける。最後はしみじみとできて面白かったと言える。役者も、タイトルを体現するように昼と夜の顔を持つ安藤政信が超カッコイイ。主役の阿部進之介の演技も繊細さが際立ってあまり知らなかったけれど良い役者だ。
ただ、欲を言えば、普通に面白かったのだ。山田孝之プロデュースとくると、良くも悪くもある種の先入観が入ってしまう。その点ではもうひと暴れしてほしい気がした。
映像が格好良かったからいいかな
正直、導入部分を全く集中して見切れていないので、終始話半分で見ていたような気がする。
話にあまり現実味がなくて、上手い具合に割愛されていた感があって、ストーリーに対して面白味を感じなかったけれど、映像そのものが自分には合っていたので、全体としては良い印象。
守るために法を破れるか
父の自殺で東京から戻った明石は
孤児院を運営する北村と出会い北村の元で
働くことになる
明石の父は内部告発によって逆に追い詰められ自殺を
してしまう
いけないことをいけないと言ったがために
まわりから総スカンされ 白い目で見られ
いったい何が正義なのだろうかと ここで考えさせられる
明石と北村を中心に物語が進む
孤児院を運営する北村も施設を運営する資金として
車を盗みそれで資金を稼ぐ裏稼業をしていた
他にもやばいが人助けのような仕事も描かれる
北村と施設にいる奈々の関係も重要なポイントな気がする
多分この彼女のために施設を作ったのではないのか
北村も表では生きられない理由もわかってくる
社会学者の宮台真司さんがよく言う言葉で
仲間のために法を破れるかとよく言われるのだが
この映画を観てまさにこのことが頭に浮かんだ
奈々を演じる清原果耶の演技が光る
内容は重い重いと聞かされていたので
どんなに重くつらい話かと覚悟を決めて観たのだが
思ったよりは気が楽に観れる作品だった
不条理な世の中
光の使い方というか、所々の儚くて柔らかい雰囲気がよかった。
この世界の理不尽さや矛盾、救いようのなさに、何とも言えないモヤモヤを抱えたまま、百々のつまり善悪はそれぞれが持つもので誰にもはかれないものなんだと思わされた。
本質そのものよりも、局面だけで判断され、一方から見ればそれは善でもう一方から見れば悪で。答えなんて自分にしか出せないし、正しいか間違ってるかなんて結局のところ不透明なんだと思う。
ただ、誰のための何のための正義なのか、守るものがあるなら守りきれる方法でないとそれって自己満足なだけじゃないかと見てて思った。
賢く生きなきゃ生き抜けない。清く正しくなんてのはいまのこの世の中やっていけない。
思っていたよりも良い♬
山田孝之がプロデュースに専念した…ということくらいで、あめり前情報なく観に行きました。結論から言うと、思っていたよりも、良かったです。ストーリーは、ありがちなのかもしれません。デイアンドナイト → Day & Night → 昼と夜 → 善と悪 という対照的なものに例えてるんだと思います。自殺をしたお父さんを正義だと思いつつ、お父さんが関わっている悪の部分に戸惑いながら、自分も関わっていく…。安藤政信さんも、結局は、そういう人でしたね。本当に、何が正義で、何が悪なのか、考えさせられますね。
個人的に、久しぶりに 小西真奈美さん観られて嬉しかったです。あと、エンディングの曲は、清原果耶さんが、役名で歌っているのでしょうか?気になりました。もっと、違う人が歌った方が良かったのかな…と。ま、好みの問題ですね。
壮大な風車の景色、とても良かったです♬
善と悪は混濁する。
この世で善と悪は混濁しており、何が善であり、何が悪であるかに答など無い。全ての人にとって常に「善」であるものなど存在せず、逆に「悪」は「善」になり得るから。
愛するもの、大切なものを守ることは正しい。それだけは、間違いが無い。
と言う映画だけど、脚本、カビ臭、青臭。リコール隠しとか「またかよ」って思う。社会派気取りに見えるネタ満載で、少し萎えます。勿体ない。
主題のナビゲーターは18歳の少女ですが、この清原果耶パートは良かった。逆に父親との関係が今ひとつの感がして。
企画・原案は主演の阿部進之介とのことですが、期待してます。盛りだくさん過ぎで整理が悪いだけで、基本、良かった。感動とまでは行かないけれど。
善と悪。あなたはどちら側にいますか?
善と悪、真実と嘘、優しさと凶暴さ、希望と絶望、表と裏、一般社会と闇の社会、昼間と夜・・・。人はどちらかの側に完全にいるわけではない。完全に「悪」に見えていも、「善人の混じった悪人」もいる。流行りの言葉「あり寄りのあり」風に解釈すればいい。
「空飛ぶタイヤ」的な導入部から、サスペンス、バイオレンスの要素で観客を翻弄し、結末を読ませない。骨太のメッセージを込めた、筋書き的には「鬼平犯科帳」にでてきそうなストーリーだ。設定にやや納得のいかない部分(田舎町でそこまで世間に知られずに窃盗団が暗躍できるものか?とか)はあるものの、それを横に置いておいて十分味わえる見ごたえはあった。画面の作りに強いこだわりも感じ、役者の気合の入りようも大したもの。
力こそパワー
久々に、観終わった後に伸びをした映画。
緊張感をもって観られた。
昼は児童養護施設で働き、夜は施設を守るため組織的に自動車泥棒を繰り返す。
そんな生活を送りながら、自殺した父親の無念を晴らすため地元の大手自動車メーカーの不正を告発しようとする。
何が善で何が悪かというテーマはもちろん作中で描かれているが、それ以上に力こそがパワーなのだ、ということを感じる映画だった。
力があればどんな不正を行っていても信頼され人を幸せにできる。
力のないものはたとえ勝つことができたとしても、不幸しか生まない。
そんな無念さが漂う。
「善か悪か」を何度も言葉で投げかけたり、序盤の作品背景の説明を登場人物のセリフにキーワードとして入れ込むなど、ちょっとセリフの使い方があからさまな感じがした。
主人公に「正義とは?」と疑問を投げかけるシーンもインタビューにしか見えなくて苦笑した。
そういう部分はあるものの、
バイオレンスな表現があるため、誰でも楽しめる作品ではないが、良い映画だと思う。
光が美しい。風力発電の風車が印象的なオリジナル作品
ここでも清原果耶が光ってる
善と悪は、どこからやってくるのか。
自分は今どこに立っているのか
秋田県鹿角市と山本郡三種町がロケ地
1ヶ月の間、3つの町で撮影
秋田県立十和田高校
風車は由利本荘海岸
三種町の風力発電の風車が並ぶ釜谷浜海水浴場も
光と闇の映像がきれい。昼と夜、善と悪の対比映像
寒さを感じる季節の映像も
「失ったものに対してどう折り合いを付けますか?」
血の繋がらない家族の愛
最近ニュースでみたスマートキーのリレーアタックがもう出てきていて、報道される前からもうある盗難技術なのかと感心。
清原果耶が作中の役柄・大野奈々名義でRADWIMPSの野田洋次郎が作詞・作曲・プロデュースする「気まぐれ雲」を歌う。これが良かった。素で大野奈々って新人歌手かと思ってググったがな。
佐津川愛美が珍しく?終始可愛いキャラで癒される。
答えはない。風に吹かれているからね。
素朴で単純な疑問を投げかける。
そんな人に、少しは大人になれよ!
と、答えにならない応え方しかできぬ大人たち。
で、全ては不寛容になってしまったこの世の中の所為にしてしまう。
久しぶりにいい映画に巡り会えた。
答えを出してくれるよりは問題を出してくれる。
そんな映画が好きなんだ。
人が死ぬと言うことは大変なことなんだし
なぜ死んだのかを探るのは当たり前のこと。
そこに、寛容も不寛容もなく事実があるだけだし
それをどう受け止めるかは本人次第だ。
疑問符を投続けた少女がバスで旅立つシーンでエンドマークなのがいい。
少しは希望を見せてくれたからね。
踏み越える善悪の境界線と、到達した思考の渦
(ネタバレ感想なので映画を見てから参照下さい)
ラスト近くの明石(阿部進之介さん)が三宅(田中哲司さん)を襲うシーンは、自分も見ていて、やれ、殺せ、越えてしまえ!と心の中で叫んでいました。
それほどそれまでこの作品の中で明石が小さく越えて来た善悪の境界線の重なりに説得力があったと思われました。
逆を言えば、田中哲司さんや山中崇さんなどの握りつぶしたくなるような憎らしい演技の素晴らしさもあったと思われました。
そしてどれほどラストに明石が三宅を殺ってしまっていれば観客の自分がスッキリ出来たかと。
仮にそれで明石が刑務所に何年も入ったとしても、誇らしい精神が観客の自分にも映画にも広がったと思われます。
ところがこの映画が素晴らしいのは、そこで明石は三宅を殺さず、殺人は未遂で終わる所だったと思われます。
その後、三宅の娘や、大野奈々(清原果耶さん)の卒業式の場面が映され、明石に殺されかけた(観客の私にとって殺してしまった方が正当と思える!)三宅が、父親としてそこに妻と一緒に参加している場面が示めされます。
明石は殺人未遂の容疑者として逮捕され、その連行される場面をTVのニュースで見る明石の母親(室井滋さん)と大野奈々(清原果耶さん)の正面からのショットは、ぐるりと回転して行きます。
この映画の到達点は、観客の私たちにあるべき結論を示さず、ぐるぐると回転する思考の渦の中に落として行く場所だったと思われます。
話は飛んで『万引き家族』と『怒り』の映画のことをこの『デイアンドナイト』を見た後に考えていました。
李相日監督の『怒り』と是枝監督の『万引き家族』は、似ている題材を扱っている点があり、それは『怒り』で宮崎あおいさんがやっていた風俗嬢と、『万引き家族』で松岡茉優さんがやっていたJKリフレだと思われました。
『怒り』と『万引き家族』はその他でも扱われてる題材が、表からは見えない底辺の生活という意味で似ている気がしています。
ところがこの両作品から受ける印象はかなり違っています。
『怒り』ではレイプや殺人など、決定的な善悪を越える犯罪がされていて、そこから反動で受ける傷も尋常ではない地点に達していて、観客の受ける衝撃や重さも『怒り』のほうが深く重たかったと思われます。
逆に『万引き家族』ではそこまでの善悪を越える犯罪がなされているわけではありません。疑似家族を守るためのささやかな万引きなどの小さな犯罪が進行しているだけです。
私はここで『怒り』が優れていて『万引き家族』が劣っていると言いたいわけではありません。むしろ逆です。
李相日監督は私も好きな監督の一人で素晴らしい作品をこれまで作ってこられたと思われますが、日本の越えられない境界線を決断でもって越えて見せてくれる優れた映画監督だとも言えます。
しかし私としては是枝監督の『万引き家族』のどこか根源的切実さから遊離され、ごまかされていると感じる部分こそ、私たちの日本のリアルではないかと、『万引き家族』見た時に感じていました。
もしこの『デイアンドナイト』のラストで、明石が三宅を決断的に善悪の境界線を踏み越えて殺していれば、どれほど観客としての満足度の高い映画になっていたでしょうか。
しかし実際のこの映画の到達点は、その手前で遊離され、思考の回転へと観客を落として行く場所でした。
そしてだからこそ逆に自分の中の大切な何かをその思考の渦の中で照らし出しているようにも私自身は思われました。
このような、企画から6年の粘りで作品によって触れられた到達に、ひとすら静かな賞賛の感情が湧き上がっていました。
思考の回転の渦の中で、この先もまた皆さんと奇跡的にそれぞれの作品で出会えることを、観客としてですが期待しています。
素晴らしい作品を今回ありがとうございました。
極限状況の主人公に答えを託す
山田孝之は映画「ハードコア」では、人間を力強く肯定する、エネルギーに満ちた作品を披露したが、本作品では逆に、矛盾に満ちた人間社会を鋭く抉って見せた。俳優としては時にチャールズ・ブロンソンのような分厚い存在感を見せてきた山田は、今後はイーストウッドのように演者と制作者の両輪で力量を発揮することになりそうだ。いろいろな意味で楽しみである。
主人公の明石幸次を演じた阿部進之介は、実はあまり他の作品での記憶がなくて申し訳ないのだが、なかなかどうして実に堂々たる主役ぶりであった。本作の主人公のように心に葛藤を抱えた孤独な中年男がはまり役だろう。今の世相を考えれば、今後そういう主役が増えていくに違いないので、比例して彼の出番も増えそうである。
中年男が主役なのに何故かヒロインは女子高生である。若者らしいストレートな質問を主人公にぶつけてくる。最初は彼女がいるとかいないとかの無邪気な質問からはじまり、付き合いが長くなるに連れて、人生観や世界観を問う質問に深まっていく。なるほど女子高生をヒロインにした理由はそこにあったのかと感心した。
明石は大変に真面目な性格で、父親が遺した言葉「善と悪の違いはどこにあるのか?」をずっと考え続ける。善と悪は宗教的な教条に拠る考え方が歴史的に存在し、たとえば人を殺すことは絶対的な悪だと信じられている。しかし戦争で人を沢山殺せば、即ち英雄である。つまり善なのだ。共同体の都合によってひとつの行動が善だったり悪だったりする。父親の宿敵である三宅が言った「正しいとは多数派であることだ」という言葉が、戦争を肯定する共同体の論理そのままである。善悪より前に共同体の存続が優先されるのだ。
女子高生の大野奈々から聞かれた「復讐して、そのあとどうなるの?」という突き詰めた問いかけに、もし自分が明石だったらどう答えるだろうかと考える。もちろん答えは決まっていないし、映画は答えを与えてくれない。ただ極限状況に置かれた主人公に、善悪の価値観とは何なのか、人間はどのように生きるものなのかを託すのだ。
スケールの大きな傑作である。清原果耶が大野奈々の名前で歌った主題歌はとても澄んでいて心地のいい歌だった。
全94件中、41~60件目を表示