劇場公開日 2018年7月21日

  • 予告編を見る

「 子供を主役にした映画はこれまでいくつも観てきたが、ここまで子供の...」悲しみに、こんにちは よしたださんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 子供を主役にした映画はこれまでいくつも観てきたが、ここまで子供の...

2018年8月14日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

幸せ

 子供を主役にした映画はこれまでいくつも観てきたが、ここまで子供の心模様を描けている作品には出会ったことがない。
 ほとんど説明的な台詞や行動はないのだが、主人公フリダの親を亡くした大きな不安と、それに必死で耐えている小さな心の動きが非常によく見て取れる。弱く、残酷で、臆病で、思いやり深く、狡猾で、誰かの庇護を求めていることがすべてスクリーンに映しだれている。
 一人の人物の心情を描いた映画として、出色の出来である。
 だがしかし、正直に告白すると、昼食後の睡魔に耐えられず、最初20分は意識不明、気付くと主人公の両親がどうなったのかも分からないが、親戚宅に女の子が預けられていた。
 そこからの鑑賞でも、十分にフリダの気持ちに寄り添うことができたのは、やはりこの作品の一つ一つのカットに説得力があったからだろう。
 今年1番の作品。と評価するからには、再鑑賞は必須である。

 そして、二度目の鑑賞。

 今年一番の収穫である。
 そのことを判断するために、再び劇場で鑑賞。
 二人の女の子が実に自然で、芝居ではなく、実際にその場で起きていることを撮影したように見える。知らずに観ればドキュメンタリーかと見紛うであろう。
 特に、主人公のフリダとの係わりが最も多いアナの、幼さゆえに伝える言葉を知らない無言の瞬間が素晴らしい。彼女のこの時の視線が、この作品の味わいを決定付けていると言ってもいい。
 もちろん、母親を亡くしたフリダの、様々な感情を整理できないでいる不安定さも、芝居には見えない現実味を湛えている。この彼女の演技が映画の骨格であることは間違いないが、相手役アナの反応があればこそ成り立つ。
 いったい、この幼い二人のキャストからどのようにしてこの芝居を引き出したのか。もしかしたら、二人にはシナリオなど与えていなかったのではないか。
 つまり、あの二人にはそもそも演技をさせていないのではないか。
 子供たちを遊ばせておいて、カメラを回す。撮れたものを編集して、ストーリーに組み込む。撮影の能率は悪いが、そうでもしなければ彼女たちの、あの自然な様子をカメラに収めることなど出来ないのではないか。
 だが一方で、ラストのフリダが泣くシーンは、自然に待っていたのでは撮れないだろう。
 監督は必要な表情を引き出すために、様々な方法をその時々選びとったのではなかろうか。この細やかな演出の仕事をやり遂げたカルラ・シモン監督に脱帽する。
 大変な力作である。

佐分 利信