劇場公開日 2017年8月2日

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「観終わると思わず空を見上げる」ZOOM ズーム 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5観終わると思わず空を見上げる

2022年10月31日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

運命というものがあるかどうか。自分の人生は物語の筋書きのように誰かが作っていて、自分はそれに従わされているだけ。そういう妄想をしたことがある人はいると思うが、この映画はそれをユニークな方法に形にした作品だ。現実の世界、小説で書かかれた世界、そしてその小説内に登場するマンガアーティストが描いた世界、その3つの世界が入れ子構造になっている。現実レイヤーの世界は、実はマンガアーティストが描いている世界なのだ。それぞれのレイヤー世界の住人がそのことに気づき始めて行動を起こし始めると、上のレイヤーにも影響が出始める。現実と虚構の存在感が等価になりつつある現代の感覚を見事に映像化していると言える。アニメーション映像を用いたのも上手い。デジタル時代、実写とアニメーションにヒエラルキー的な差異はないのだ。観終わると、思わず自分の人生もだれかに書かれているのかと空を見上げて確認したくなる。

杉本穂高