劇場公開日 2017年12月23日

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「文句なしの怪作」勝手にふるえてろ 猫シャチさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0文句なしの怪作

2018年1月16日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

本作は一応は恋愛をテーマとして扱っていますが、恋愛にかぎらず、孤独で辛い現実を妄想と脚色によって日々サバイブする全ての人に刺さる作りになっています。さほどミスリードな作りにはしておらず、冒頭から「ああ、これはヒロインの妄想なんだろうな」と分かる演出をしているにも関わらず、松岡茉優の巧みな演技によりいつの間にか良香(ヨシカ)の世界観に引き込まれ、どこまでが妄想で、どこからが現実なのか曖昧になっていく構成がお見事。脚本もご都合主義に寄せすぎず、絶妙なリアリティラインで展開されていて無理がなく、非常に完成度の高い作品に仕上がっています。

他の方も仰るように、とにかく松岡茉優さんの演技が素晴らしい本作。美人だったりブサイクだったり、良香の内面に合わせてガラっと顔そのものが変わってしまうのが凄い。「良く見ると美人とも言えるけれど、注視しないと目立たない女性」という、創作には良くある設定だけどリアルに再現するには難しい役を、絶妙なさじ加減で演じきっています。
松岡さんの演技が自然で巧すぎるために、同僚であり友人でもある来留美を演じた石橋杏奈さんの演技プランと若干噛み合わせが悪いのはご愛嬌。

個人的には、年末の大作(の割に凡庸な)映画ラッシュに食傷気味でしたので、久々に1800円払う価値のある映画に出会えたな・・という印象です。

猫シャチ