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◆ヴァレリアン 千の惑星の救世主

ベッソン流でやりたい放題!ハッピーなバイブスにあふれたSF大作
  本作の主人公ヴァレリアンは、タイトル通り千の惑星を救うのか? いや、実は壮大なフカシである。メインの舞台となるのは巨大な宇宙ステーションで「千の惑星の都市」とあだ名されるほど、銀河各地からやってきた雑多な種族たちが暮らしている――という設定なのだ。別に惑星は救わない。

  しかし、本作はリュック・ベッソンという映画監督を救ったのではないか。興行成績に関しては製作費が巨額過ぎて厳しいと聞くので、決してベッソンが率いる製作元のヨーロッパコープが救われたわけではない。では、なぜベッソンが救われたのか? それはベッソンの映画術が、近年では嘲笑レベルの批判を受けていたのも関わらず、路線も変えずに"面白さ"で作品をねじ伏せることに成功したから。本来ならベッソンの弱点である幼稚と言われかねない精神性やストーリー運びの杜撰さが、まるで奇跡のように本作の雑然とした魅力に直結しているのだ。

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  映画の冒頭のシークエンスから、この世知辛い時代に対するアンチテーゼとテーマ性があふれ出してくる。地球上空に浮かぶ宇宙ステーションに、遥か宇宙からの来訪者は次から次へとやってくるようになり、人類は否応なしに宇宙という広大な社会の一員となるのだ。ベッソンが提示するのは侵略や搾取といったネガティブな未来像ではなく、ユートピア的な融和と受容なのである。やがて宇宙ステーションは増築を重ね、銀河のあらゆる種族が暮らす「千の惑星の都市」へと発展していく。まだ開始5分なのに、なんといい話であることか!(BGMはデヴィッド・ボウイの「スペース・オディティ」)

  ベッソンはスペースオペラという形式を借りて、無邪気なほどストレートに、種の違いや利害の対立を越えて文化や価値観が共存する混沌とした社会を肯定している。ただしベッソン流のやりたい放題映画だから、男勝りの痩身モデル美女(カーラ・デルヴィーニュが最高に魅力的)に何度もお召し替えをさせたり、ベタなギャグや子供が飛びつきそうなガジェットをブッ込んだり、もう誰得なんだかわからない豪華ゲスト陣を使い潰したりと、思いつくアイデアをこれでもかと放り込みながら。

  理想をしかつめらしい顔をして生真面目に説いても人の心には響かない。しかしベッソンは本作で、過剰にハチャメチャに遊びまくったあげく、「ほら、理想っていいでしょ!」と満面の笑みを向けてくるのである。ダメなところは山のようにある。むしろ珍品だと思うが、こっちまでつられて笑ってしまうようなハッピーなバイブスにあふれたSF大作なのだ。ハッピーなバイブスって初めて言ったけど、どうか使い方が合っていますように。

(村山章)


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