劇場公開日 2020年6月19日

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「傲慢なエジソンの実態」エジソンズ・ゲーム bunmei21さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5傲慢なエジソンの実態

2022年7月24日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

トーマス・エジソンと言えば、1800年代後半に、白熱電球や蓄音機など、多くの発明品を世に生み出した発明家のイメージを誰もが持っているだろう。本作では、その発明家としての実績の裏に隠され、あまり知られていない、起業家としての苦悩や敗北を史実に基づいて描いている。

発明家としては天才的な気質を示したエジソンだが、金には執着することなく、大統領からの命令にも応じないという、その傲慢な態度故に、敵も多かったことが覗える。本作では、電力システムの違いからの、直流送電を中心としたエジソンと交流送電を中心としたウェスティング・ハウスとの『電流戦争』を取りあげている。

最終的には、シカゴ博覧会を境に、ウェスティング・ハウスの交流送信が、勝利をおさめていくのだが、そこまでに、エジソンが抱いたウェスティング・ハウスへの敵対心は、凄まじいものがあった。交流送信に反対するプロパガンダを煽動したり、交流送電を使用して、多くの動物を使っての殺処分や死刑執行の手段として試みて、その危険性をアピールした。決して子供用の伝記では語られないような、エジソンの高いプライドからくる傲慢さと醜悪な態度がうかがえた。

また、そこに最初はエジソンの元で働いていた、技師の二コラ・テスラ(現在の電気自動車メーカーの名前の元にもなった)がもエジソンのやり方に反旗を翻し、ウェスティング・ハウスに寝返って、共に交流送電に勝利に貢献したのも面白い。

こうして観てくると、電流送信に関しては、エジソンより、ウェスティング・ハウスの方が功績は大きいように思う。しかし、恥ずかしながらこの作品を観るまで、彼の名前を知らなかったというのは.偉大な発明家としてのエジソンに、歴史は軍配を上げたのかもしれない…。

出演は、偏屈で傲慢なエジソンに、ベネディクト・カンバーバッチ。敵対するウェスティング・ハウスには、マイケル・シャノン。意外だったのがエジソンの助手役に『スパイダーマン』のトム・ホランドやウェスティング・ハウスの強気な妻役に、『ファンタスティック・ビースト』のキャサリン・ウォーターストンが出演していたこと。なかなかの人気俳優が、脇を固めていているのも楽しめる。

bunmei21