劇場公開日 2017年6月24日

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「意味はさっぱり分からないが後味がなぜかよい」ありがとう、トニ・エルドマン brigambさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0意味はさっぱり分からないが後味がなぜかよい

2019年2月4日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

笑える

幸せ

オチのないエピソードの積み重ねで映画が進み全体を通してのこれといったエピソードがないので説明が難しい。
後半の全裸パーティはなぜそうなってしまうのか全く意味不明でそれを言えばそもそもトニ・エルドマンなる架空の人物の必然性がさっぱり分からない。映画評などでは「おやじギャグ」と称されているがそれを通り越してキチガイだ。
こんな親は縁を切っておかしくないのだが、イネスはたまにぶち切れこそしても、父親を拒絶しない。このイネスが美人とは言いがたく、あまり笑わないのだが決して非人間的ではなくけっこうドジだったり、また父親に対する家族の情が感じられ、とても好感が持てる。
それに助けられてか、前述どおりキチガイとしか思えない父親も変人だけど根はいい奴と思えてくる。父親もヨーロッパ映画らしく、ブクブクに太っていてシェイプアップに関心さえなさそうなところが真実味がある。
そういう意味では余計なBGMがなく、また意図的なのかハンドカメラで雑に撮っている感じや過剰な演技がないところもヨーロッパ映画らしい。そこに人間味やリアルさがあり、それぞれのエピソードに締まりがないながらも暖かみが感じられる。
そして、イネスのたまに取る突拍子もない行動に、結局のところこの二人は親子だと思え、それがオフビートな笑いを誘う。

2時間半前後の上映時間は途中で気が遠くなるが、観終わったあとに言葉で説明しがたいなりに観て良かったと思える、そんな映画。

brigamb