劇場公開日 2017年8月18日

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「リアカーなきK村、どうせ借るとするもくれない馬力。」打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか? kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0リアカーなきK村、どうせ借るとするもくれない馬力。

2020年8月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 原作にあたる岩井俊二監督の同名作品(1993)では三浦先生が花火の炎色反応について授業していたのですが、今作ではあっさりカット。元は45分の実写映画なので、どう話を膨らませて調理するのかと興味津々でありました。違いを細かにチェックしようとするも、映画から受ける印象さえ違っていたことに驚きました。

 岩井版では淡い初恋を経験する主人公ノリミチの時間を戻せないもどかしさを妄想(?)のような描写でノスタルジーを表現していましたが、今作では“もしも”の世界を実際に時間を巻き戻してやり直すという、ある意味タイムスリップ的なファンタジー世界を描いていました。町の名前、神社の名前など全てを“茂下(もしも)”で統一しているくらいです。さらに、時間が戻る瞬間映像では電球のフィラメントが“if”と描かれているくらいこだわっています。

 それでもアニメ化の価値が下がってしまうことはありません。幻想的な花火の映像が岩井版ではラストシーンのみだったのに対して、丸いのか、平べったいのかをわかりやすく伝えてくれるからです。2度目のタイムスリップをしてナズナと灯台で観た花火。それが上手く平べったいことを伝えてくれたのです。こんなの現実じゃない!とノリミチはつぶやく。すでにタイムスリップできることに気付いているのですが、現実じゃないことに満足できない様子。さらに現実ではありえないファンタジックな花火まで・・・

 岩井俊二ファンならば怒りだしてしまいそうな改変もあったにもかかわらず、80年代の松田聖子の「瑠璃色の地球」をなずな(広瀬すず)が歌いだすシーンだとか、同級生の少年たちが「三浦先生!」とか叫ぶシーンにはちょっとニンマリ。岩井版でも登場するシーンなのですが、「観月ありさー!」はないだろうと思ってたのに・・・あった。セーラームーンはなかったが。スラムダンクがワンピースに変わってたことは何となく予想がついた。

【2017年8月映画館にて】

kossy