劇場公開日 2017年9月2日

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「バンド愛と編集センスが光る、数多くの音楽ドキュメンタリーのなかでナンバーワン」ギミー・デンジャー Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0バンド愛と編集センスが光る、数多くの音楽ドキュメンタリーのなかでナンバーワン

2017年9月14日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

数多くの音楽ドキュメンタリーの中で、ナンバーワンかもしれない。

ジム・ジャームッシュ監督による、"ザ・ストゥージズ"のドキュメンタリー。この組み合わせでノックアウトだ。

イギー・ポップを、自作の「デッドマン」や「コーヒー&シガレッツ」でも俳優として使っているジム・ジャームッシュ監督の心意気がにじみ出ている。

ザ・ストゥージズは、1967年イギー・ポップを中心に結成され、1974年のライブを最後に自然消滅した。その間、たった3枚のアルバムしか残していない(2007年の再結成で1枚)。当時は商業的に成功したとは言えなかったが、デビッド・ボウイやニコにインスピレーションを与え、セックス・ピストルズやダムドなどにも影響を及ぼし、以降の多くのロックバンドに敬愛されている。

"ロックミュージックの創始者は誰か?"という答えに当てはまる人は何人かいる。しかし、音楽スタイルだけでなく、ライブパフォーマンスやファッション、ロックカルチャーそのもののカタチを作ったのは、"ストゥージズ"かもしれない。ストゥージズなくして、いまフェスで騒いでいる子供たちのパフォーマンスや、それこそ"ステージダイブ"は存在しない。

ドキュメンタリーなので、過去の映像素材を中心に編集されるわけだが、なによりバンドに対する、心からの愛がある。バンドの曲の使い方が素敵である。

また、イギー・ポップやメンバー、関係者へのインタビューが新たに撮られ、バンド結成から自然消滅、再集結と現在にいたるまでが時系列に並んでいるのだが、映画作家としてのジム・ジャームッシュの編集センスの高さが細部にわたって光る。

インタビューシーンをそのまま使うのではなく、アニメーションで置き換えられたり、話題になる人物や事象が、過去の映画やテレビ番組などのカットを引用して、これが絶妙な間(ま)となってコミカルな雰囲気を生み出す。

周囲が敵だらけだった昔と、再結成後に一変した現状況の、天と地ほどの差。メンバーの死、ロックの殿堂入りには泣けてくる。ジェイムズ・ウイリアムソンの再合流のライブ映像は貴重。

(2017/9/10 /シネマカリテ/ビスタ・一部スタンダード/字幕:斎藤敦子/翻訳監修:大鷹俊一)

Naguy