劇場公開日 2017年8月4日

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「グレートとまでは言わずともグッド!な出来」ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5グレートとまでは言わずともグッド!な出来

2017年8月11日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

楽しい

興奮

自分はマンガ・アニメ原作映画は未読の場合が
多いが、ジョジョは別。全巻繰り返し読んでいるし、
現在連載中のシリーズも読んでいるファンである。
だから「実写映画化なんて勘弁してくれ……」て
感じだったし、監督が三池崇史なのも最悪だと
考えていた(好きな作品もあるが『テラフォーマーズ』が
ここ1,2年で観た中で最低レベルの映画だった点が大きい)。

が、批判するのも絶賛するのも観ないことには
始まらない。チコッと頭に血は上ってはいるが
全然冷静な状態を努めつつ鑑賞。

...

結論から書くが……
驚いたことに、これがかなりかなり頑張っていた。
実写映画単体として光る部分もあったし、原作の
雰囲気を崩さぬよう注意を払いつつ、映画として
物語の流れをスムーズにし、さらに各キャラの行動動機
を強調するような改変が事細かに施されていたのである。

なにより評価したいのは、映画版の物語が、
主人公・仗助が警官である祖父・良平の意志を継ぎ、
「この街を守る」という決意を固めるまでの物語
として完成しているという点だ。

茶目っ気があり、どんな人間にも優しく、誰よりも
正義感の強い良平。國村隼の好演に加え、原作の
キャラを補強する随所の描写が効いている。
彼の最後の登場シーンには思いがけず涙したし、
「お前の能力はこの世のどんなことよりも
優しい」という台詞も原作以上に胸に迫る。

実体のある超能力“スタンド”でのバトルも良い。
『ジョジョの奇妙な冒険』における戦闘は単なる
殴り合いではなく、特殊能力者同士の頭脳戦が主体。
水を操るスタンド“アクア・ネックレス”戦は
その面白さを十分に感じられる出来だったし、
戦闘のテンポも最後の胸のすく決着も良かった
(「傷は完璧に」のシーンは原作通りの順番
 の方が感情の流れとして自然だとは感じたが)。
クライマックスである“バッド・カンパニー”戦の
ビジュアルは特筆ものの面白さで、本物の○○の
ように画面狭しと動き回り壮絶な攻撃を加える様は、
実写映画でなければ味わい難い興奮だろう。

ブッ飛んだ見た目のキャラクターについては……
まあ色々意見あるだろうが、動いて喋り出せば
そこまで違和感は感じなかったかな。山崎賢人の
啖呵(たんか)の切り方はクールだったし、
神木隆之介は最良の選択肢だったのではと思える。
承太郎は実写化する上で最も困難だった筈だが――
人間ばなれした肩幅とか髪型とか――伊勢谷友介
もそのシブい声と鍛えた体躯で頑張っていた。
あと、舞台となる杜王町も、イタリアロケの効果で
かなり良い感じに原作の雰囲気が出てました。

...

惜しむらくはクライマックス。
前半までは快活だった台詞回しやテンポが急に
勿体ぶったような調子になり、極端に鈍重になる。
アンジェロ戦→クライマックスの流れも性急過ぎた。

また、各戦闘シーンは原作よりも増強されてはいるが、
そもそも世界観としてのスケールは打ち出し
にくい設定の物語だし、実写化にあたってはもっと
量と密度のあるアクションにして欲しかったと感じる。

もうひとつ。
“スタンド”やその起源について説明がほぼ無い点も気になった。
原作未読の方はスタンド≒形のある超能力くらいに
捉えておけば大丈夫とは思うが、せめて虹村兄弟の
父については多少は説明しておくべきだったのでは。
原作未読の方が置いてきぼりになって、最後の写真
とかにも感動しきれないのではないかと心配。
……まあそこを説明しようとすると英国貴族とか吸血鬼とか
波紋とか肉の芽とかウィルス進化論とかブルリンとか
色々説明しないといけないので難儀かね。

...

以上!
説明不足と感じる部分はあるしスケール感に
乏しい点もあるが、一癖あるクールなビジュアル、
台詞、アクションシーンは原作未読の方でも
割と楽しめるんじゃなかろうか。
やっぱ映画は観てみるまで分からないもんです。
予想以上に良く出来ていたと思います。
グレートとまではいかずともグッド!な出来。
観て損ナシの3.5判定。

<2017.08.05鑑賞>
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長い余談:
映画単体としての内容は上記で終了。
長くなるがここでは原作との比較を中心に書く。
興味ない人は読み飛ばしちゃってくださいな。

殺人鬼・アンジェロは一番最初の敵であることも
あって原作での描かれ方は小物っぽいのだが、
山田孝之演じるアンジェロは映画前半を引っ張れる
だけの凶悪な卑劣漢となっていてグッド。
また、アンジェロの存在感が増した分、岡田将生演じる
虹村形兆の存在感も増強する必要があったのだろう。
形兆が弓矢で人を射殺す描写などが原作から追加
され、彼が何の目的で殺人を重ねるのか?という
サスペンスを前半から強く打ち出している。
さらに、アンジェロと虹村形兆が直接絡むシーンは
原作には無いが、あの食事シーンで『アンジェロ
より形兆の方が優位』→後半の敵と意識付けさせ、
物語の流れをスムーズにもしている。

上記の他にも、2時間の実写映画として
物語を成立させる工夫が施された箇所は数多い。
原作を細分化して並べ替えたり融合させたり、
実写するには難がある部分(亀を助ける仗助や
数日に渡るアンジェロとの闘い等)も、
原作から逸脱しない範囲で変更・編集。
原作を尊重しつつ、映画内の物語として自然に
見えるよう細部にまで気を配っていると感じた。
ただ、スタンドのビジュアルも原作に忠実だが、
実写の中で登場するとアニメっぽ過ぎて違和感。
色彩落としたりしてリアルな感じにして欲しかったな。

あと……最後にあのスタンドが登場するのは……
うううううん、どうなんだろ?
間違いなく目撃者が出ると分かってるのに、あの
キャラがそんな危険な橋を渡るような真似をするかねえ?
第二章でちゃんと納得のいく説明をしてくれればだが……
興行的にはたぶん続編制作は苦しいんだろうなあ。
やれやれって感じだわ。

浮遊きびなご
としぱぱさんのコメント
2017年8月14日

コメントバックありがとうございます。
既に鑑賞されていたんですね。
私もジョジョファンで気なってます。
興行的に失敗の感が強くなってますが
段々と良いレビュー増えてる気がします。
他にも見たい作品が今目白押しで
時間とお金との相談ですね。

鹿児島に帰省だとか。
私の嫁さんの実家は志布志なんですよ。
どの辺りでしょうかね。
ここに書いちゃうと個人情報なので
微妙なんですが・・。

明日から休みなので自宅でのんびりと
毎年恒例のSW作品の鑑賞予定です。
一本位は映画館に行きたいと思う今日です。
体調にはお互いにお気をつけてお過ごしください。

としぱぱ