劇場公開日 2016年11月18日

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「どちらかというと小説で読みたいかも」ガール・オン・ザ・トレイン alalaさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5どちらかというと小説で読みたいかも

2023年11月22日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

レンタル店で新作として並んでた時に興味持ってたんですが、その時は視聴に至らず。こんなに経ってしまった。
有名な小説を映画化したということ以外は全く知識なく、今回借りてきてしまってからレビューを確認し、フェミがー!女がー!という意見も見られたので失敗かと思ってたんですが、身に覚えのある人ほど説教臭く感じて嫌がりそうな内容だなーとしか思いませんでした。
差別に対して中途半端な知識しかない(というかほぼ「差別」って単語しか知らない)人ほどポリコレアレルギーを発症してる感じがするけど、本作は押し付けがましいフェミニズムを感じさせる話ではない。
むしろフェミニズムという言葉が一般化する前だったら、誰も説教臭いなどと思わず、女性目線の話だな程度に見てたんじゃないかな。「そういうこともあるよな」と。
何十年も昔やってた火曜サスペンスに似たような話が結構あったけど、当時も女性目線の話だなとしか思わなかった。
ゴジラも核反対の話だけど、誰も説教臭いなどと嫌わないし。説教臭いからではなく、単純に言われたくないことを指摘されて気に入らない人が多いんじゃなかろうか。

ただ、本作が特別面白いかというと別に…という感じ。
特に前半部分は主人公の記憶があやふやだし、3人の物語を順繰りに、しかも遡って追っていくスタイルだしで、何が何やらわからん状態が長く続くので、前半でもうだいぶ飽きる。
一緒に見てた家族が「あとどれくらい?」と訊いてきて、シークバー見たら半分もいってなかった時の絶望。
スピード感が出てくるのは後半から。読書好きな人なら、小説の方が楽しめそうだなと個人的には思います。ちなみに原作は2015年のイギリスの小説。映画化されたのが2016年。速いな。

結構がっつりエロ、流血シーンあり。

正直言うと、主演のエミリー・ブラントの顔が何となく好きじゃなくて、それがずっと本作を見よう見ようと思いつつ気乗りしなかった理由でもあるんですが(酷いな)。
実は彼女の演技を見たの自体、多分今回が初めてです。
いや良かったわ…流石に有名、人気俳優なだけあって上手かった。素人が偉そうに批評することじゃないが、台詞少なく、表情だけで表現する映画が好きなので、本作に起用された理由もよくわかった。
アル中演技もなかなかのもん。ヘアメイクさんにも拍手。アル中でベロベロの時は下唇が荒れて肌も髪もボロボロ。これが終盤にかけて徐々にまともになっていく。

レベッカ・ファーガソンは何か見たことある顔だなーと思ったら、『グレイテスト・ショーマン』で歌手役やってた人ですね。
綺麗な人だなーくらいにしか思ってなかったけど、なかなか眼力のある美人でもあり、第2のシャロン・ストーンとか何かその辺になりそうなのわかる人いるかなあ。シャーリーズ・セロンほどの怪しい雰囲気じゃないけど、一癖ありそうというか。

ヘイリー・ベネットは多分本作で初めて知りました。本作のセクシー担当。この役に起用した人、やりましたな。
エミリー・ブラントやレベッカ・ファーガソン、ルーク・エヴァンズみたいに輝く存在感があるわけではないが、彼女の演技も良かった。
主演でなくとも、多分脇役で色々出てるんだろうな。もっと起用されてほしい。いや、自分が知らないだけで、売れてない人じゃないんだろうけど。
良い俳優、良いスタッフを集めた作品だなと思いました。

ただやっぱり、サスペンスと銘打って映画化するには前半が単調すぎる。
それに、キャラ3人それぞれの話があるので視点が分散するうえ、時系列順でもないので話があっちこっちし、更にはどの話とどの話が繋がってるのか、嘘が本当かもわからないまま見ている時間が半分以上で、そもそも話自体が地味で記憶に残りづらい。
ともかく、前半でつまんねー!と匙を投げずに辛抱強く見る映画です。前半は各キャラの説明や前置きのためにあるようなもん。見ただけで原作が小説だなとわかる作りです。話つまんねーなと思ったら、俳優の演技に没頭しましょう。
良いか悪いかで言ったら良いんだけど、人に勧めるかと言われたら、よっぽどサスペンスやミステリーが好きで何でも見たいと言う人にしか勧めないであろう、良いところと微妙なところが絶妙にマッチした微妙な良作です(おい)。

現代らしいフェミニズム映画みたいに言われてますが、上にも書いた通り、何十年も前の火曜サスペンスを思い起こす人は結構いると思います。
ラストは確かに近年の「女性同士の連携」を思い起こさせる作りにしていましたが、だからといって「まさに現代らしいフェミニズム映画」かと言われるとなあ。ほんと、昔からあったんですよこういうストーリー。
細かいところは確かに現代らしく、女性に対する根強い偏見を調査した結果などを調べて盛り込んだのだろうとわかりますが、研究調査されるようになったのが最近だから、今作るならそこまで調べて製作するのは当然でしょうし。
日本で、まだ一般人が偏見や差別なんてほぼ知識もないような何十年も前のテレビドラマで、女性に対する差別や偏見について詳しい調査もされておらず、インターネットもないから簡単に調べることもできず、当時の製作陣はほぼ全員男性だろうし、それでもこういう類の話は今より稚拙ながら生まれていたわけで。
そんなここ数十年の歴史を振り返っても、本作を見てフェミがー!最近の女はー!となる人は、よほどのアレルギーかなと。

ところで、エミリー・ブラントが泣いてるシーンで、上唇をうにゅ~ん…と引っ張るところがあるんだけど、あれ何だったんだろう…
シリアスなシーンだっただけに、何か笑ってしまった。ブラント自身の癖なのか?
まあ、そういうのは俳優の愛嬌ということで…

ちなみに『キャプテン・アメリカ』の主演だったクリス・エヴァンスが本作に出たがっていたという話を見かけたけど、キャプテン役をやっていた頃から本当にキャプテンの真面目で潔白、正義!のイメージを付けられたくなかったんだなあと。
俳優としては演じてて楽しいのか知らんけど、よくこんなゴミみたいな奴を演じたいと思うなあというくらい悪役がゴミでした(多分オファーしたのはゴミ役だと思う)。
最新作の『ペイン・ハスラーズ』でもゴミ役だったらしいけど、キャプテンのイメージよりゴミみたいなイメージを付けたいのか、最近はゴミクズ野郎の役が割と増えてるけど大丈夫なのか。
『ゴーステッド』は普通の人役を演じたみたいだけど、次の『レッド・ワン』も一般人役だったような。
クズ野郎だの、ヘボ一般人だの、とにかくキャプテンのイメージから早く抜け出したいという気持ちが伝わってきますね。
クリス・エヴァンスのゴミ役はまだ一度も確認できてないんですが(『ナイヴズ・アウト』のはゴミ役といえるのかな…)、本作のクズ役を演じてるところが全く想像つきません。

ともかく本作は、エミリー・ブラントへの食わず嫌いを一掃してくれた記念作でした。
今後は注目していこうと思います。

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alala