劇場公開日 2016年10月28日

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「さすが、エゴヤン監督作品。一筋縄ではいかない。」手紙は憶えている とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0さすが、エゴヤン監督作品。一筋縄ではいかない。

2020年5月4日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

興奮

知的

人の心の奥底に潜む、無意識に自分自身すらをだましてしまう、自己防衛・自己都合が、引きずり出され、醸し出される。

犯人探しサスペンスと、おじいちゃんが遂行できるのかとで、ハラハラしながら見る初見。
けれど、結末を知ったうえで再見すると、それぞれの映像・演技・音楽に仕掛けられたメッセージに唸り込んでしまう。

子どもにウィットに満ちた言葉がけができる人。あそこで泣ける人。人柄を表すというインテリア・エクステリア。あのような家族に囲まれる人。
そんな人たちの過去。もし、時代が違っていたら、共に生きる人が違っていたら…。
”ナチ””ドイツ人”と一言で説明しても、様々な立場・信条。
『アドルフに告ぐ』にも通じるテーマ。

自分が自分であるという”記憶”。そして周りが認定する”自分と言う人”と”記憶”。
事実と”記憶”。周りの人・状況の中での”記憶”。
いとも簡単にゆがめられるもの。『デビルズノット』でも、『スウィートヒアアフター』でも、このテーマを違う形で描いている。
それでいて、エピソード記憶や時が混乱しても、体が、耳が覚えている記憶。
たんに、”認知症”の症状というだけでは説明できない。解離・思い込み…。様々な記憶。

ナチの脅威が過去のものではないことも恐ろしい。
ナチグッズが、オークションで高額で落札≒たくさんのナチオタ・信奉者の存在。

銃社会USA。日本では高齢者ドライバーが問題になっているが、銃なんてその比ではないだろうに…。

ラスト。
自分が自分であることの崩壊。こうありたいと生きて来た自分と、過去。
それがあぶりだされた時、人はそこに何を見、何を行うのか。

極限のテーマ。

誰が良い人で、悪人なのか。そんな単純ではない。
人間の業というものを、またつきつけられてしまった。

名優ありきの…って、この繊細かつ奥深さ・味わい深さ、それでいてのおかしみ、ほっこりと緊張のバランスは、彼らでなくては出せない。
観る価値がある。

とみいじょん