劇場公開日 2017年5月27日

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「エンディングに心地よい風を吹かせる、成島監督による心優しい映画」ちょっと今から仕事やめてくる Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0エンディングに心地よい風を吹かせる、成島監督による心優しい映画

2017年6月7日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

幸せ

優しい映画である。

いわゆる、"ブラック企業"あるいは"組織的パワハラ”をテーマにヒネリを効かせた、心震わせるプロット。成島 出監督だからこそ集まった、役者の演技レベルの高さに支えられている。

新人会社員"青山隆"の自殺の瞬間を救ってくれた、"ヤマモト"と名乗る見覚えのない、幼なじみ。"ヤマモト"との交流から前向きになる青山だったが、実は"ヤマモト"は3年前に自殺していたことが明らかになる・・・。

おそらく観る人・世代によって感じ方は様々かもしれない。それは"他人事"だから。

営業職で身を粉にしてきた世代は、"甘い"とか"使えない"と言いそうだし、むしろ、徹夜や残業を"勲章"のように誇りとしている人も少なくない。似たような現象に、学校やスポーツ指導での"体罰・暴言"もある。"これくらいで弱音を吐くか…!"という筋違いのスポ根である。

イジメも、自殺に追い込まれる前に、"転校すればいい"とよく聞かれる。本作では、(そんな会社は)"退職すればいい"ということになるが、当事者は、それさえもできない苦境に追い込まれているのが現実だ。

成島監督は、前作「ソロモンの偽証」(2015)でも、"学校内のイジメ"・"自殺"を描いていた。今作品は、"企業内イジメ"である。しかし社会メッセージのために、リアルな描写や、ミステリーのオチを用意したところで、当事者は救われない。

本作の良さは、いま現実に苦しんでいる人に手を差し伸べる内容になっているところだ。エンディングに心地よい風を吹かせるというイメージも「ソロモンの偽証」と共通している。

主演は、"ヤマモト"役の福士蒼汰ということになっているが、どちらかというと工藤阿須加とW主演といってもいい。福士蒼汰の明るい役柄は本作のテーマに対する清涼剤になっていて、こういう役は「仮面ライダーフォーゼ」(2011)を思い出す。工藤阿須加は、元プロ野球投手の工藤公康の長男。これも、"あぁ、クドウの息子か!"と言う時点でジジィなんだろうね。

脇役で黒木華が、しっかりと存在感を出している。また、小池栄子も成島組のひとりとして出演。

(2017/5/27/TOHOシネマズ日本橋/ビスタ)

Naguy