劇場公開日 2017年2月11日

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サバイバルファミリー : インタビュー

2017年2月9日更新
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小日向文世&葵わかな、過酷だった撮影を通じて深めた“親子の絆”

「ウォーターボーイズ」「ハッピーフライト」の矢口史靖監督の最新作「サバイバルファミリー」は、「もしも地球から電気がなくなったら」をテーマに、都市機能が麻痺した東京から脱出した一家の奮闘をコミカルに描き出すサバイバルドラマだ。本作の主人公でもある父親・鈴木義之は、口先ばかりで何もできないくせに態度が偉そうなダメ男。そんな父親を矢口監督は「サバイバルに向いていない、日本一ダメなお父さんにしたかった」と語っていたが、その思いを「スウィングガールズ」「ハッピーフライト」などでタッグを組んでいる小日向が絶妙な演技で応えている。

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「監督の中には、父親はこういう人、母親はこういう人という、ハッキリとしたイメージがあるんです。だから、ある意味楽でしたね。監督と話をしていくうちに、絶対にサバイバルに向いていない人なんだろうなと思いました。おまけにカツラですもん。本来、カツラなんて第一稿にはなかったんですから。第二稿を見たら、カツラをパチンと外して置いてからご飯を食べると書いてあって。あれはきっと人の顔を見て決めたんでしょうね」と、小日向は笑いながら振り返る。

一方、長女役の葵はオーディションで役を勝ち取った。子どもたちの配役について矢口監督は「(長男役の泉澤祐希も葵も)とてものびのびしていて。まだ癖もカラーもついていない。真っ白な画用紙のようだったのが決め手」と語っている。今回、矢口作品初参加となった葵は、スマホを手放せない、つけまつげ命の女子高生・鈴木結衣を演じている

「もちろんすごい映画に参加させてもらえたとは思っているんですが、とにかく本当に過酷な撮影だったので、そういったことよりもとにかく目の前の撮影をこなすことで精いっぱいでした。撮影が終わったのはおととしのことだったんですけど、あれから日にちが経って。ようやく矢口監督の作品に出られて良かったなと実感するようになりました」。

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水もない、食料もない極限の生活。そこに突如現れた100キロを超える豚を家族全員で追いかけるカットは、豚の動きが予想できないため朝から夕まで何度もリテイクを重ねた。しまいには豚に振り落とされ、小日向があばらを強打するひと幕も。しかしそれゆえに迫力とコミカルさが同居した印象深いシーンとなった。そんな矢口監督の演出を「イメージがしっかりしているから妥協がないんですよ」と小日向は証言する。

「本当にしつこく撮るからヘトヘトになりましたよ。でも監督がよろこんで、オッケーを出してくれるということは、きっと面白い絵になっているんだろうなということが想像できたんで。そういう信頼感はありました」

そしてその矢口監督のこだわりは葵も感じていたという。

「トイレに入ろうとしたら、水が流れていなくてゲーッとなるシーンがあったんですが、監督は『そうじゃない』『そうじゃない』と何度も繰り返しました。あそこは本当につらかったですね。監督のイメージがハッキリしているので、そこにハマるのは本当に難しかった」。

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しかしその甲斐あって、小日向が「あそこすごかったよね。あの表情でこの世界が大変なことになっている、ということが想像できるもんね」と感心するほどのシーンとなった。葵も「監督はいっぱいしゃべる方ではないので、監督が発した言葉から、監督が思う結衣ちゃんと、わたしが思う結衣ちゃんとをつなげるのがやっとという感じでした」と振り返る。

そして母親役は深津絵里。小さい頃からテレビや映画で彼女を観てきた葵にとっては、小日向同様、尊敬すべき先輩である。実際に会うまで「どんな方なんだろう」と非常に緊張していたという。

「でも実際にお会いしたら、小日向さんも深津さんもお二人ともすごく優しくて。わたしたちなんてまだ子どもなのに、対等に話を聞いてくれた。わたしは高校生なので、テストの話や課題の話とか。そんな他愛もない話や、好きな食べ物の話とかもしましたね」。

もし突如、電気や水道、ガスの供給がストップしたら? 単なる停電だと思っていたのに、ライフラインが復旧する気配が見えない……。ロレックスやマセラティよりも、たった一本の水の方が価値がある世界。そんな世界について葵は「わたしは携帯がないとダメかもしれませんね」とポツリ。小日向も「携帯がなくなったら家族とも連絡がとれなくなるし。これは大変だろうね」。スイッチをひねるだけで、当たり前のように快適な暮らしを享受している現代人には想像を絶する世界である。

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豚を追いかけ泥まみれになる、極寒の川の中に入るなど、映画の内容のみならず、撮影現場そのものもサバイバル体験だった。しかしそんな大変な時間を共有することで、家族4人の結束はどんどんと固くなっていった。

小日向が「やはり、サバイバルが大変になればなるほど、息子、娘たちが迫真の演技を見せた。本当にリアリティが出てきたんで、あれはすごく良かったですね。お腹をすかせた時に肉にかぶりつくシーンがあったんですけど、あそこもすごく良かった。身体を張って演じさせられたのはしんどかったけど、それがいい具合に表情に出てたし、家族もお互いにつらい思いをしているから、どんどんきずなが深まったよね」と振り返れば、葵も「ひとりでやるより、4人でやったほうが、みんなで頑張ってやろうという気持ちになれた。豚をいっぱい追いかけてヘトヘトになったときも4人なら笑えましたもんね」と力強く付け加えた。

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