劇場公開日 2016年7月23日

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「『D坂の殺人事件』の続編!」屋根裏の散歩者 kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0『D坂の殺人事件』の続編!

2019年6月17日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 同じ舞台、同じ設定なので『D坂』と続けて観るとわかりやすい。今作の郷田三郎は原作でも同じ名前であるため、D坂の方がむしろ改変されて同一人物にしたのであろう。さらにこの郷田キャラに不気味な性的嗜好を加え、とにかく横恋慕することが好きで、SMやら覗きばかりに走ってしまうというもの。D坂でも屋根裏から覗くシーンがあったのだが、今作を意識しての予告みたいな位置だったのだろう。

 アパートの住人たちからも変人扱いされ、歯科医助手の遠藤からも「女を作れ」と嫌味を言われ、大内照子が引っ越してきてからは遠藤との関係に気づき、いつか殺してやろうと密かに企むのだった。屋根の節穴から唾を落とすシーンなどは狂気にしか見えなかった。そして、仲も良くないのに一緒に酒を飲んで、モルヒネという殺しの手段を本人から聞き出す郷田だった。

 明智とはD坂の物語で悦子を奪われたという因縁が、今度はしくじらないぞと完全にライバル視している。そして、照子を悦子にダブらせてしまい、自分自身も倒錯の世界に入ってしまったかの様子。不気味な演技はなかなか良かった。

 ACK探偵事務所というハイカラさは健在。遠藤自身も婚約者に対しては性的不能であることがコンプレックスだったという設定も面白い。大正の古めかしいセットで完全に官能ドラマとして成り立たせている作品。短編を繋ぎ合わせた大胆さが良かった。

kossy