劇場公開日 2017年2月18日

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「トトホなライアン・ゴズリングが見られます。」ナイスガイズ! 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5トトホなライアン・ゴズリングが見られます。

2017年3月24日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

単純

興奮

 今や『ラ・ラ・ランド』の大ヒットで時の人となりつつあるライアン・ゴズリング。実は今公開中のB級映画にも主演していることを知っている映画ファンは少ないのではないでしょうか。上映館も限られていますが、結構面白い探偵バディ映画なのです。共演する相方の探偵は、ラッセル・クロウとなかなか豪華な配役。そして監督は『リーサル・ウェポン』(脚本)、『アイアンマン3』(監督)のシェーン・ブラック、製作にはジョエル・シルヴァー。伝説のバディ・ムービー『リーサル・ウェポン』シリーズを生み出した2人が再タッグを組んだ作品なので、面白くならないわけがありません。ラストにはビルの屋上から落下する派手なアクションも取り混ぜて、 史上最高の凸凹コンビと“幼カワ”ヒロインが巨悪を暴く,これぞナイスガイ!と歓声を送りたくなる実に愉快で痛快な娯楽作に仕上がりました。

 舞台は1977年の米ロサンゼルス。ちょうどアメリカ社会では、大気汚染が深刻になり、自動車の排ガス規制が叫ばれていた時代背景が本作の伏線となっています。

 シングルファーザーで気弱な私立探偵マーチ(ライアン・ゴズリング)は、廃業危機に瀕していました。近年成立した、離婚法の改正によって、離婚原因の拡大が認められた結果、探偵に依頼する浮気調査が激減したのです。途方に暮れていたマーチの元に、不思議な依頼が舞い込みます。冒頭で事故死したはずの人気ポルノ女優ミスティが、生きているのを見かけたので、調べて欲しいと叔母のミセス・グリーンが依頼していくのです。

 金になるならと不可思議な依頼でも、引き受けたからにはと調査を始めると、ミスティが関わった最近作のポルノ映画の関係者が次々不審死していることが浮かんできます。そして共演者のアメリアというフリーターの聞き込みをやっていると、突然元軍人で腕っぷしの強い示談屋ヒーリー(ラッセル・クロウ)から、アメリアには関わるなとボコボコに暴力を受けてしまいます。ヒーリーの仕事は、家出少女や箱入り娘専門で、父親から依頼を受けて、悪い虫を腕力で屈服させ、別れさせることを生業としていましたのです。てっきりマーチは、アメリアにつき舞うと悪い虫と勘違いされてしまったのです。
 しかし、ヒーリーも得体の知れない殺し屋から襲撃を受けて、アメリア探しが単なる家出少女捜しではないことを感じます。身の危険を排除するためにも、アメリアの居所を突き止めて、本人から事情を聞こうとヒーリーは、マーチを探偵として雇って、ふたりでアメリアを探すことに。ヒーリーが、トイレで隠れている怯えるマーチを見つけ出して依頼するシーンは、抱腹絶倒ものです。

 捜索していくうちにふたりは、アメリアが大気汚染抗議団体主催していたことを突き止めます。そして、突然司法省に呼び出された二人は、アメリアの母親ジュディスと対面することに。ジュディスはカリフォルニア州司法省長官という立場でした。そして排ガス規制にも関わっているとも。娘のアメリヤは親の足を引っ張るため、心配をかけることばかりしてきたというのです。そして、大気汚染に反対するポルノ映画で自ら肌を晒しているとも。ふたりは改めてジュディスからも娘を探して欲しいという依頼を受けます。

 ふたりの探偵コンビに、13歳で車の運転までこなすキュートなマーチの娘・ホリーが加わり捜索を進めていくと、簡単なはずだった仕事は、次々と襲い来る凄腕の殺し屋に標的とされ、大ピンチに。3人は命がけで事件解決に奔走します。1本の映画にまつわる連続不審死事件へと繋がり、やがて3人は自動車業界の利権に絡んだアメリカ国家を揺るがす巨大な陰謀に巻き込まれていくことに…。

 80年代にSFXが大流行する以前のハリウッド製活劇に先祖返りしたかのようなバディームービー。社会からはみ出した男たちが、時にいがみ合いながらも悪党をやっつけるという定番の物語ながら、妥協のないアクションシーンが退屈させません。そしてクロウとゴズリングが対称的なキャラを演じているというところも面白いところです。あくまでヒーリーは腕っ節は強いけれど、推理はからっきしダメ。その点一見頼りがいのなさそうで、いつも娘から馬鹿にされているマーチは、情報力や分析力が抜群で、ヒーリーにとって欠かせない相方となったのです。ふたりに共通することは、人生に問題を抱えた駄目男。そんなコンビがぶつかり会うことで繰り出す人間臭いユーモアには、監督のなんとか客を楽しませようとするサービス精神がたっぷりです。クロウ&ゴズリングの芸達者な迷走コンビの2作目が見たくなること必至でしょう。

 それにしても、『ラ・ラ・ランド』のゴズリングとはえらい違い。最初はゴズリングとは分かりませんでしたよ。演技の振れ幅の違いが凄いです。

 おっと、忘れてはいけないのは、マーチの娘のホリー。ダメ男コンビに“道徳的指導”を与えまくります。まだ中学生なのに、おませさんです。自宅に訪問してきた医師を殺し屋と見抜いて、自ら拳銃で相対するなど、大活躍!ホリー役のアンガーリー・ライスは、続編で大立ち回りを見せれば、きっとクロエ・グレース・モレッツの再来かと絶賛を受けることでしょう。また今年公開の『スパイダーマン ホームカミング』にも出演するので、ぜひ彼女にご注目ください。

流山の小地蔵