劇場公開日 2017年2月18日

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ナイスガイズ! : 映画評論・批評

2017年2月14日更新

2017年2月18日より新宿バルト9ほかにてロードショー

1970年代的な荒っぽい見せ場と血の通ったキャラクターに胸が弾むバディ活劇

いわゆる“ノッてる”スター俳優には、不思議なくらいいい映画の出演オファーが集まるものだ。今なら女優はエマ・ストーンイザベル・ユペール、男優はライアン・ゴズリングがその代表格だろう。ゴズリングと言えば話題沸騰のミュージカル映画「ラ・ラ・ランド」でロマンティックに演じた夢見るピアニスト役に注目が集まるところだが、その前週に日本公開となる本作も要チェック。「ラブ・アゲイン」でコメディもイケることを証明済みの二枚目スターが、入念な役作り(!?)で体をでっぷりとふくらませたラッセル・クロウとの絶妙な掛け合いを披露するバディムービーだ。

口より手が先に出る荒くれ無免許探偵(クロウ)と、妻に先立たれて酒に溺れる私立探偵(ゴズリング)がひょんなことから手を組み、ポルノ女優怪死事件の背後に渦巻く陰謀に立ち向かうという物語。舞台となるのは1977年のロサンゼルスで、全編を彩る衣装や音楽はもちろん、随所にちりばめられたアクション描写も1970年代仕様なのがいい。何でもかんでもCGで派手に盛りつける今風の演出を避け、荒っぽくて鈍いパンチ&キック、ショットガン&マシンガンを炸裂させるアナログの様式を徹底。乱闘シーンで無駄なくらいガラスが砕け散るたびに、つい快感を覚えてしまう筆者のような昔気質の活劇野郎にはたまらない見せ場が続出する。気弱なへなちょこ探偵ゴズリングは、ビルの屋上やベランダから幾度となく転落してもしぶとく生き延びる不死身ぶりを見せつけ、終始むっつり顔を貫くクロウとのコントラストで笑いを誘う。

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決してヒーローにはなれない日陰者の探偵コンビが、まったく正義を叫ばず、警察権力に頼ることもなく、おのれの意地とプライドに突き動かされて巨悪との闘いに身を投じていく設定も、アウトロー映画の王道と言える。人生を踏み外した男たちの人間性回復のドラマを、湿っぽくならない程度のさじ加減で織り交ぜた小粋さ。これほどきちんとアクションに物理的な歯ごたえがあり、キャラクターに血が通った娯楽映画は、現代においてはある意味貴重ですらある。

本作の主役2人を1970年代のスターになぞらえるなら、ラッセル・クロウバート・レイノルズライアン・ゴズリングライアン・オニールのイメージだろう。加えて、ゴズリングの娘に扮したアンガーリー・ライスのキュートな助演も見逃せない。駄目な大人たちを正しき道へと導くこの美少女を、最大級の賛辞をこめて“21世紀のテイタム・オニール”などと呼んでみたくなる。

高橋諭治

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