劇場公開日 2017年2月25日

「あなたは、自分は人としてどういう人なのか」彼らが本気で編むときは、 菜野 灯さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0あなたは、自分は人としてどういう人なのか

2023年2月22日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

女性の心をもつ男性に生まれたリンコはトランスジェンダーであり性転換手術を行い、理解あるパートナー・マキオと暮らしている。いずれは女性として戸籍も登録する予定であり、名実ともに女性である。それでも外見上は男性の名残があるため、女装をしているような男性と見られることがあり、一般的には理解されにくい面がある。
マキオの姉は、娘のトモを片親で育てているものの、時折、育児放棄しては戻るということを繰り返している。そのたびに、トモは叔父のマキオの世話になってきたが、今回は様相が違った。
マキオはリンコと暮らしていて、リンコの女性である面がふつふつと感じる場面が多い。母性愛がすごく感じる演出になっていて、演じた生田斗真には拍手を送りたい。
最後はそれでも生みの親の母親の元に戻ってしまうけれど、ひと月余りを過ごしたリンコとの思い出、愛情は一生、残りつづけるだろう。ひとは心の美しさが大事であり、一見した外見だけの判断では誤ってしまう可能性が多分にあることを示唆してくれる映画。女性や男性の型式にハマることなく、まずは人としてどうなんだというところを突かれているようで、ひとを観る目を柔軟にしてくれる映画。とてもよかった。
あとはカットの寄りと引きのバランスが自然で、カメラワークも緩やかで落ち着いていて、ゆっくり観ることができた。

菜野 灯