劇場公開日 2016年10月7日

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「ボーン・ソーリー」ジェイソン・ボーン 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0ボーン・ソーリー

2016年10月11日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

興奮

難しい

マット“ジェイソン・ボーン”デイモン、9年振りにカムバック!
しかも、「~スプレマシー」「~アルティメイタム」のポール・グリーングラス監督とのタッグなのだから、ファンには待ってました!

…なので、勇気を持ってぶっちゃけるけど、
実はこのシリーズ、それほど好きって訳でもない。って言うか、ちょっと苦手。何故なら、
む、難しいから…。
勿論アクションはスゲーし、3作品に渡る物語は巧みに謎と伏線張られ、スリリングでシリアスでドラマチックで、数あるアクション映画の中でも非常に完成度の高いシリーズだと偽り無く思っている。
でも余りに複雑過ぎて、一応シリーズは全部見てるけど、劇中のジェイソンよろしく記憶が曖昧。
一作一作詳しく教えてと言われたら、言葉に詰まってしまう。
また、監督がグリーングラスになってからは余りにスピーディー過ぎて目が回りそう。
新作を見るに当たって久し振りに見直したが、やはり印象は変えられず。
まあ、そんな事はさておき、新作の感想を。

上記の理由で話についていけないんじゃ…と、見る前はちょっと覚悟。
確かに話はこれまでの内容を把握している前提で進むが、それほど直接的な繋がりではなく、また新たな物語として進むので、その点は有り難かった。
でも、今回の題材が…。

新たに取り戻した記憶は、CIA分析官だった父の死の謎。
製作側にとってはいい引き出しを見つけたようなものだが、これは引き出してはいけないものだと思った。
だって、父の事が触れられたら、母が…とか、ウェッブ家はCIAと…など、歯止めが効かなくなる。
後、これは自分が覚えてないだけかもしれないが、今まで父親の事少しでも触れられていたっけ??
無理矢理の引き出し、引き延ばし感が否めなかった。

強固な監視システム、ハッキング、プライバシーの漏洩…。
劇中の台詞にも出てきた実際の事件の影響色濃くタイムリーで、その脅威も充分だが…
でもこれって、誇張しているだけであって、今までやってきた事と同じだよね…?

ジェイソンの記憶の謎と孤高の戦い、それにまつわるCIAの陰謀。
今回の父の死の謎はジェイソンの失われた記憶にさらに一歩踏み込み、CIAの陰謀も絡み、一見シリーズの定石通りだが…
微妙にニュアンスが違う感じがした。

めぼしいアクション・シーンが冒頭とクライマックスだけなのも物足りなかった。肉弾戦も少ないし。
勿論、冒頭のデモシーンは臨場感たっぷり、クライマックスのカーチェイスはさすがの迫力。
でも、これまでのような目が回るほどのたたみかける激しさには欠けた。
(今回、スタント・コーディネーターがダン・ブラッドリーじゃなかったからかなぁ…)

トミー・リー・ジョーンズ、アリシア・ヴィキャンデル、ヴァンサン・カッセルの新キャストは適材適所。
アリシアは新たな魅力を見せてくれた。
でも、新キャスト3人束になってもジョアン・アレン一人に敵わず。

厳しい意見ばかり述べたが、つまらなかった訳じゃない。
不満点や物足りなさや新鮮味には欠けたものの、一応の高クオリティー。
だけど結局のめり込む事は出来ず、ただボーッと展開を眺めているしか出来なかった。

見事に完結したシリーズでも新作を見たくなるのは当然。
が、新たな物語を展開していいものとそうじゃないものもある。
今作は後者。だって、

記憶を失われ、恋人も亡くし、神経すり減らすほど孤独に戦ってきたジェイソン。
再び戦いの場に戻され…。
もう、彼の事をそっとしておいてあげようよ。

近大