劇場公開日 2016年10月7日

  • 予告編を見る

「ボーンにも変化が問われる時代」ジェイソン・ボーン ao-kさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5ボーンにも変化が問われる時代

2016年10月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

興奮

★3.5は決して低い評価ではない。純粋に面白いし、スリルもあるし、迫力もある。ただ、このシリーズとしては低評価と言わざるを得ないのが残念だ。

これまでの3部作では“ボーンは何者か?”という大きな謎が物語を貫いていた訳なのだが、その謎が明らかになった後で浮かび上がる今回の謎が“なぜ彼が工作員になったのか?”というのは、取って付けた感が否めない。何よりも、これまで自分自身が何者なのかを問い続けて、つまりは自分の居場所を求めて戦ってきたエモーショナルでストイックな主人公が、今作では世の為、人の為に戦う方向にシフトしたことで、単なる超人アクション映画の域に留まってしまったのだ。

思えば、ボーンが初めてスクリーンに現れたのは2002年のこと。自分は何者か?正義とは何か?を問い続ける主人公は、どこか同時多発テロ事件以降のアメリカを擬人化したようにも見え、結果として多くの人の心を掴んで大ヒットとなった。だが、この主人公像も今や時代にマッチしなくなってしまった。ネット経由で様々な情報が管理され、あるいは隠蔽され、またあるいは暴露されるポスト・スノーデンの時代においては、現場主義のアクションも絵空事に見えてしまい、ラスベガスでのド派手なアクションさえも物語から浮いて映るのだ。

こう考えると007でベン・ウィショーが演じたQの方が時代的にリアルなスパイ像に見えてくる。世界情勢に応じて、変化が問われるスパイ映画において、ボーンはどのように変化してくるのだろうか?不安よりも期待を抱いて、ボーンとの再会を待ち望みたい。

Ao-aO