劇場公開日 2016年10月8日

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「まさに“ヨルの綱渡り”。さまよえる孤独な2つの心。」少女(2016) 映画コーディネーター・門倉カドさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0まさに“ヨルの綱渡り”。さまよえる孤独な2つの心。

2016年11月3日
PCから投稿

悲しい

怖い

難しい

【賛否両論チェック】
賛:周りの人間関係から外れた2人の少女が、目の前にちらつく「死」と向き合いながら、少しずつかすかな希望を手にしていく様子に、人間としての在るべき姿を改めて考えさせられる。
否:特に序盤は淡々としているので、興味がないと眠くなりそう。イジメ等、思わず目を背けたくなるようなシーンもある。

 片や、
「自殺は敗北宣言だ。」
「この世界には、愛も自由も平等も存在しない。」
と周りから距離を置いて生きてきた由紀。片やイジメの対象となり、周りから距離を置かれて生きてきた敦子。2つの孤独な心がもがきながら、同じように孤独な孝雄や、難病で入院中の子供達とのふれあいを通して、少しずつ希望を見出だしていく姿が、印象に残ります。それはまるで、由紀が劇中で書く“ヨルの綱渡り”さながらで、思わず考えさせられます。
 一方で、他と違う者を簡単に迫害してしまったり、己の欲のために何のためらいもなく他人の人生を壊してしまったりと、人間の持つ醜い部分が淡々と描かれるので、その辺りは好き嫌いがハッキリ出そうなところでもあります。
 軽い気持ちで観られる作品ではありませんが、闇のように深い絶望の中でかすかに光る希望を描く、そんな作品に仕上がっています。

映画コーディネーター・門倉カド