劇場公開日 2017年1月21日

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「ラブコメディ、バリカタ、ラブ抜き」マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ うそつきカモメさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0ラブコメディ、バリカタ、ラブ抜き

2024年1月22日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

何の予備知識もなく、見てみたら、意外に面白かったのでびっくり。
タイトルからして、もっとポップなラブコメディを想像していましたが、ジュリアン・ムーアとイーサン・ホークが出演しているあたり、そうはならないんですね。この映画で語られる恋愛と、セックス(または、生殖行為)は、まったくの別物で、主人公のグレタ・ガーヴィグは、見た目のエレガントさはさておき、中身は恋愛下手の、生活感あふれる女性。ドレッシーなファッションはきっと似合わないと、自分で敬遠してしまうような女性で、なんと精子提供で母親になろうとするリアリストです。

恋人や、パートナーとしての男を必要としない生き方を目指し、そう宣言してしまっているのは、ある意味では「ずるい」生き方でしょう。誰かが彼女に恋心を抱いても、「そこは求めていないの」といって拒絶できる、便利な断り文句があるのです。

で、この映画が変わっているのが、スタートからいきなり状況説明のセリフばっかりで、エモーショナルな展開が付け足しのようにしか描かれていないこと。淡々と、男と女が出逢い、愛し合い、家族になる。このプロセスが、どこかの知り合いのカップルから聞いてきた程度の簡単な展開で埋まり、あっという間に、不思議な三角関係が成立してしまうこと。

その中で、唯一、納得できないまま、ひどい目に遭っているのが、モテモテのイーサン・ホークですけど、彼も実際ひどい自己チューなので、何の共感も感じなければ、同情心も湧かない。

アメリカの恋愛事情が、ここまで打算的な、「私を愛して!それが出来ないなら、浮気されても文句は言えないでしょ?」略して「ミーイズム」になってしまっているなら、特に、ホワイトカラーには支持される作品になるでしょう。

あとは、音楽がちょっと変わったテイストで、弦楽器を中心に、状況音楽のような軽い高揚感のあるクラシカルでシンプルな曲が使用され、深刻なシーンでも、なぜか可哀そうにならないんですよね、誰も。『第三の男』『スティング』にちょっと似てます。

なにしろ、今まで見たことのないタイプのラブコメディー・バリカタ・ラブ抜きの映画でした。

うそつきカモメ