スポットライト 世紀のスクープのレビュー・感想・評価
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人生のよりどころと社会正義の狭間
派手なエピソードを期待しているとつまらないかもしれない。
性的虐待自体が、被害にあった方の心を破壊する力を持つ犯罪。
その上に、自分の魂のよりどころ=親や、自分が信仰している神に最も近い立場にある人からの行為。
映画の後半に明かされる母の手紙が、その問題の深刻さを示していて絶句する。
カトリック教徒でない人からすると、たんなる巨大権力の闇を暴く作業であるが、
カトリック信者にとっては、自分達のよりどころに対する戦いでもある。
身近な人々に恨まれ距離を置かれても、成し遂げるべきなのか。
苦しむ人々を見捨てて、自分の保身・安定を選ぶべきなのか。
難しい選択。
たかをくくっていた事件が、徐々にその全貌を現してくる様。
それに伴って、変化してくる担当記者のモチベーション。
信仰と、職業倫理の狭間で葛藤する弁護士。
被害者の想い。
人間模様が丁寧に描かれている。
記者たちは、自分勝手な自己満足の正義を振りかざしているだけではない。
被害者の痛みに寄り添っている姿も胸を打つ。
だからこそのラスト。涙が出てきた。
(プリンセスクルーズ内劇場にて鑑賞)
社会的に価値があるアカデミー受賞
神父の性的虐待を暴いた新聞記者達の実話のストーリー。
実話なので見ている時よりも、見終わった後、特に日が経てば経つほどじわじわと効いてくる映画でした。
後から知って驚いたのは、ウォルター役のマイケル・キートンは本人と数日間過ごし、マーク・ラファロは撮影現場に参加していたマイク・レゼンデスに自身の台詞を毎回口に出して言ってもらいできる限り似せるように努力したそうです。
この作品がアカデミー賞を取ったのは製作者にはもちろんですが、社会的にとても意味があったように思います。
見方を問われる作品。
カトリック系私立に長年通っていたので、この手の話は元々聞いた事があった。
善悪を教わる専門の組織だからこそ、敬う対象でもあり、神に最も近い聖職者の悪事。
淡々と情報収集を続け、徐々に裏が取れていく。
秘密裏に動く新聞記者4人のチーム、各々がなすべきことをフル稼働でこなしているが、過度なチーム!という励まし合いなどなくても信頼関係がしっかり構築されているのが良かった。
聖職者達による小児性愛の隠蔽は、確かに司教区や皇教が組織的に行なっている。
だが、ボストンという街を背景に、沢山の犠牲少年少女たちが出ている状況を、教会だけではなく、街全体=自分達も見て見ぬ振りしているのではないか?これは他人事ではないごく身近に起こっていた事なのに。これを突きつけてくる作品。
カトリックという宗教が当然のように根付いている地域にとって、教会に行き司祭の話を聞いて育つのは習慣であり、教会に携わらずに成長するものは少ない。
作品中に出てくる、地域の野球チームのようなもの。
しかも教会は、人々が心を通わせ共感し支え合い、同じ気持ちを抱く、心の交流の場、憩いの場、許しの場でもある。
誰もが成長し別々の職に就き様々な人生を歩むが、自らの軌跡の中にある、教会を、司祭を、あえて否定し糾弾するのは心理的にも辛い事。同じ街で生まれ育ってきた仲間の人々を否定し、その街に根付く過去を否定するのともニアイコール。
新しく違う街から来たユダヤ系トップだからこそ、目についた事件、大ごとにするのを厭わない姿勢。
それによそ者意識を抱く者もいる中で、真実を大切に報道する責務は同じ仲間、と記者各々が新しいトップを受け入れていた。
記者それぞれも、他人事ではなくこの件を身近に感じショックを受けながらも、記事に向けて調査を進めていく。小さな火種があった時に報じるチャンスを眠らせてしまっていた者、司祭達の弁護を親友がしていた者、子供達も通る近所に司祭のケアセンターがある者、教会に通い続ける祖母に事実を知らせなければならない者。
それぞれが街に住んでいる以上なにかしらこの一件に関わっていて、街に思い入れがあるほど、ショックも大きく、自責の念にも駆られる。
記事の後も同じ街で生きていかないといけない記者達にとって、大スクープの記事を街に投下することは、その後の人生、人間関係にも大きなヒビを入れかねない、生きづらくなる可能性もある出来事だっただろう。でも、全員が被害者の目線を向いて、真実を追求して、記事を公開する方向で奔走していく。誰も抜け駆けや出世を狙うなどの行動のブレがない。
私生活を犠牲にしながらも、真摯に事実に向き合う姿勢にとても好感を持てた。
では司祭達が根っからの悪党かというとそうではなく、禁欲の教えを厳格に守ろうとする聖職者だからこそ、歪みが生じて、身近で大ごとになりにくい少年少女にしわ寄せが行ってしまう。中には司祭自身が被害者だった者もいる。若くから聖職者として勤め、複雑で綺麗ごとだけではいられない思惑が交錯する現実の中に身を置いていなければ、精神年齢が12-13歳のまま成長が止まっていたとしても不思議ではないだろう。まだ司祭自体が大人になっていないから心の綺麗な説法をできるのかもしれないが、身体面の欲求を理性でコントロールできないのではかなり問題。
その問題司祭が、全員の6%にも登るというのだから、これはカトリックという宗教のあり方の根幹を揺るがす大問題。トップが隠蔽に励むのも当たり前だろう。
一方で、記事の事実収集に駆け回っている頃、9.11テロが起こり、多くの人々が教会を必要としていたこともまた事実。
非常に大きな問題だが、だからといってカトリックや宗教そのものを悪とは言い切れず、教会が街に、多くの人々に多大な貢献もしているという、こみいった問題。
ある種、組織の縮図とも言えるカトリックの組織体系。
第三者を入れない閉ざされた組織のあり方、内部の人間だけでは何十年かかってもまず変えられないだろう。
記事を読んだ人々が、記事をきっかけに見て見ぬ振りをやめ、能動的に更なる情報提供を行ったように、この作品を突きつけられた鑑賞者達も、これ以上の子供が被害に合わぬよう、子供を守りながらの信仰のあり方を模索していく義務があると感じた。
事実に基づいた映画
映画の核心部分が衝撃の事実なので
飽きずに最後まで観れるものの
皆早口でストーリー展開も早く
ぼーっと観れる映画ではない。
音楽の使い方、映画の進行具合で「太陽にほえろ」を思い出した。
俳優さん達は上手く演じていると思った。
ペンと剣
宗教的なフィルターによって濁らされた実態に立ち向かうその様は、
かつての時代の騎士のようだった。
剣をペンに持ち替えて戦う現代の騎士。
報道とは本来こうあるべきものであり、有名人のプライベートな話題を追う事は報道とは呼べないでしょ。
隠ぺいする組織はいたるところにある事実。それが教会でも。
新聞記者たちがカトリック教会のスキャンダルを暴いた実話を、トム・マッカーシー監督が映画化。牧師といえども欲望には勝てず、それを組織がらみで長年隠ぺいしていた事実を露わにした作品。非常に面白いが、切なくもあった。
ん?映画なの?ドラマみたい
一人で見るぶんには良いけど、誰かと一緒はオススメしない。ふーん。という感想。元々こういう系に向いてないのもあるけど。。。
ドラマを見せられてる感覚。
飽きたのか疲れたのか途中で大きく溜息をついた。
ボストンだからこその衝撃
ボストンという街は、アメリカの中でも歴史のある方で、嘗ては「ニューイングランドの首都」と呼ばれていたほど、ヨーロッパからの移民が大勢を占め、故にカトリック信者が圧倒的に多い。
そういった環境の中で、司祭、神父の小児虐待の事実、その教会の隠蔽の暴露は、日本でいうと◯◯新聞が信◯町の◯価◯会・・・、この話辞めましょうね。
今まで実話ベースの映画ってあまり面白くなかったから苦手ですが、オスカー脚本賞取っただけあってなかなか面白く観られました。スポットライトメンバーの自宅近くの療養所とか不穏だったから、もう少し脚色しても良かった気もする。
事実とはいえ、これだけカトリック教会と対峙した話をよく映画にしたなと感心。
でも感動したか、というと微妙な話。
ドキュメンタリーに近い。
アカデミー受賞作品で1番面白くないかも
世界各地で起きたカトリック教会の神父達の性的虐待スキャンダルを新聞「ボストン・グローブ」が暴いていくお話。
期待したっす。アカデミー賞作品賞作品だから。
だけど、新しい上司から「深く突っ込んで取材してみろ!」と言われ結果は大規模な事件だっただけ。
作品の深みも何もない、「突っ込み取材したら、いいネタになった」ぐらいの作品でガッカリ。
自分らの過去を反省してもどうにもならんよ。
緊迫感も無く、取材映画であれば邦画「クライマーズ・ハイ」の方が10倍マシである。
(って言ってもクライマーズ・ハイでもドラマ版の方が数倍面白いんだがね・・・)
宗教・性的・虐待など社会性があれば何でもいいのか?アカデミーさんよ。😰
「真実」という言葉の重さ
アメリカで教会を訴えると言うことは、日本で天皇を訴えることと似ている。それでも真実を伝える事に人生をかけて挑む姿が、ジャーナリズム大国アメリカで、さすが。
伝えるのものの「覚悟」が強く伝わって来る作品。
真のジャーナリズム。
記者たちの地道な努力が
教会の大スキャンダルを白日の下に晒した。
ボストン人々にとって神父は神様そのもので、
彼らを糾弾することは信仰を打ち崩すことにもなりかねない。
取材は情報源だけでなく記者自身の心も傷つけるが
それでも第三権力を行使して、
教会の暴挙を止めるため必死に進む。
こういった記者たちの地道な仕事ぶりに裏打ちされる形で彼らの正義が描き出され、自然と引き込まれる。
マークラファロがマイケルキートンに
マジギレするシーンや、
ラストの日曜の電話番シーンは最高です。
ボストングローブの5人の記者
2002年、700本の記事によって249人の神父の小児虐待を告発し、1,000人以上の被害者が明らかになった最初の記事を世に出すまでのあれこれ。
タブーに挑む記者たちと地域に根差した腐敗したネットワークが明らかになる展開に背筋が凍った。
クリスマスに教会で歌う子供たちと、それを苦い顔で見つめるマーク・ラファロが印象的。
うん、見応えはあった。ただ、この手の映画をあまり観ていないからだろ...
うん、見応えはあった。ただ、この手の映画をあまり観ていないからだろう、途中で少し眠くなったのと登場人物が多いので誰がどの人か分からなくなることもあった。記者たちの仕事をじっくり描いてあるし、ラストがどうなるのか引き込まれることもあった。
後は他の人の感想を観てから
演出は派手さはないが、適切な塩梅だと確かに思った。
骨太でしっかり描ききってる
2年前のアカデミー作品賞やっと鑑賞。
評判通り良かった。
骨太の社会派作品は最近の好みなので、満足。
10年間プロテスタントの学校に通ったとはいえ、日本人的に「教会」の存在っていうのはなかなか実感しにくい。
(そもそもプロテスタントは牧師さんだったし。)
本作鑑賞後に神父による性的虐待事件についてさらに記事を読んでみたけど、当時当たり前のように隠ぺいされた出来事が、今作品賞を取るっていうのは改めてすごい。しかもそんなに昔のことじゃないのに。
アカデミーは時代を反映する。だから面白い。
映画に関していえば、どのキャストも素晴らしい演技。前年にバードマンで話題になったマイケル・キートンも、そして助演女優賞にノミネートしたレイチェル・マクアダムスも。
こういう映画をもっと見たい。
登場人物たちの静かで熱い思い
地味といえば地味かもしれないが、こういう一つ一つの積み重ねで社会が動いているんだ、と思う作品。
特に「今が大事なんだ」と主張する現場記者と「そうではなく、システムを変えなくてはいけないんだ」と主張する部長とのやり取りは必見。
ともすれば単なるありふれた構図にしかならないかもしれないが、自分が浸かっている社会(宗教的意味で )で、自分が被害者になり得たかもしれない、という恐怖感や、この一分一秒に被害者が生まれているのだ、という焦燥感が見えたのもまたよかった。
自分達が思っていたより遥かに多い被害者・加害者が見つかった、しかし公表後はもっと多くの人たちが被害者だったとわかった。
一番最後の字幕で出た数多くの都市の名前、そしてその数以上の被害者たち。
登場人物たちは何を思ったのだろうか。
喜び、安堵、後悔、感謝、怒り・・・色々なものが連想されたし、「アメリカの、宗教の話だけではない」というのが製作側の意図なのかとも思った。
ともかく、いい作品を見せてもらった。
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