劇場公開日 2016年6月4日

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高台家の人々 : インタビュー

2016年6月4日更新
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綾瀬はるか、いくつもの変化を経てたどり着いた“幸せな仕事”

今春で31歳になった。女優デビューが2001年なので、すでに人生のほぼ半分の歳月を女優という仕事に捧げていることになる。そんな指摘に、綾瀬はるかは「え? ホントだ!! そんなに!?」と目を丸くする。ここまでの約15年を、本人は「まだ7~8年くらいの感覚です」と笑うが、その月日の中で、いくつもの変化、大きな波があったと振り返る。(取材・文・写真/黒豆直樹)

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主演最新作「高台家の人々」で綾瀬が演じたのは、純粋な心を持ちながらもどこか垢抜けない、妄想好きの「ちょっともっさい(笑)」OLの平野木絵。ややサエない女性に分類されがちな彼女が、他人の心を読むテレパス能力を持ったイケメン御曹司・高台光正(斎藤工)と恋に落ち、立ちはだかる障害を乗り越えていくさまがコミカルに描かれる。

「木絵ちゃんがコミカルな妄想に入っていくのがすごくかわいくて、『おいおい!』って突っ込みたくなるような部分もあって(笑)、そこは大事にしたかった」と語る綾瀬。光正をはじめ美男美女ぞろいで、さらに心を読むという特殊能力を持つ高台家の面々に圧倒される、受け身の芝居が多い本作だが、強い共感を持って木絵を演じた。

「思ったことを言葉にするのが苦手でなかなか言えない! でも、そこで思っていることを(光正に)のぞかれたらすごく恥ずかしいという気持ちは理解できます。『わかるわかる』って部分と同時に『そこ、思ったことを言っちゃえば楽なのに、もうっ!』という思いもありますね」。

斎藤とは大河ドラマ「八重の桜」でも現場をともにしているが、共演シーンはごくわずかで、本格的に対峙するのはこれが初めて。いまをときめくセクシー俳優・斎藤工の印象を聞いてみた。

「大河ではすぐに斎藤さんの役は自決してしまうんですけど、すごくカッコいい役だったんですよ。だから、ご一緒できるのを楽しみにしていたんですけど、バラエティ番組に出られているのを見てると『あれ? この人、変わっている人なのかな?』って(笑)。実際にお会いして、うん、大河のときは役柄もあってカッコよかったんだなって(笑)!」

なかなかシビアな評価だ。光正のように心の内は読めずとも、意外と(?)鋭い観察眼を披露する。

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「どこかちょっと変わっていますよね(笑)。以前、バックパッカーで世界を放浪して『一回、死にかけたから、残りの人生は余生だと思っている』とおっしゃっていましたけど、どこか達観しているというか。頭の良いかたですし、あとはすごい分析マンなんですよ」

綾瀬自身も舞台挨拶やバラエティなどでの発言で「天然」と言われることも少なくないが……。

「私は、仕事に限らず友人との会話とかでもそうなんですけど、人を笑わせたり、面白い方に持って行きたくなっちゃうんですよね。まあ、実際、ボケっとしているところはあるし(笑)、自分でも『なんでバラエティだとこんな変な発言が出てきちゃうんだ!?』と思うことはあります。笑いの神様が降りてきているんじゃないかって(笑)。でも、20代のころは、それこそ木絵ちゃんのように恥ずかしくて言いたいことが言えず、空回りして、それを『天然』と言われて。いまは、少しは大人になったし、自分を作ったり、計算しているというわけでもなく、面白いことが言えたら嬉しいので、人がどう思うかはそれぞれなんだなと以前よりは気にならなくなりました」。

確かに、綾瀬がテレビなどで見せる“素”の部分に対し、上記のようなパブリックイメージがあるのは確かだが、こと女優としての綾瀬をひとつのイメージで括ることは不可能だ。「八重の桜」では激動の時代をしなやかに生きる主人公、「きょうは会社休みます。」では初めての恋に試行錯誤する30歳のOL、「わたしを離さないで」、「精霊の守り人」と状況や設定が違えども過酷な運命を背負ったヒロインを体現し、映画では「海街diary」で妹たちを支える強い姉……。まさに、作品ごとに全く印象が異なる役柄を完璧に演じ分ける希代のカメレオン女優と言える。

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こうしたひとつひとつの役柄が、自身の人格形成に「大きな影響を及ぼしている」と語る。「役を演じているその一時期もそうですが、それが内側で積み重なって、自分の性格や感情が出来上がっているんだなと感じます。強い役をやれば強くもなる。それまでそういうマインドがなかったところに、新しい扉が開かれて、最初は戸惑うし『難しいな』って思うけど、やってみると『あぁ、こういう自分もいるんだ』となって面白いです」。

ひとつの大きな転機となったのは、やはり大河ドラマで1年にわたり、主演を務めた経験。「大河以前は『こうなりたい!』というものも明確にはなく、目の前の仕事を一生懸命こなしつつ『このままやっていくのかな?』と漠然とした気持ちだった」という。それが、変わった。

「そもそも『演技って大変…』って気持ちが強かったんです。他人になったり、何度も同じことしたり、泣かなきゃいけなかったり。でも、大河の仕事をして演技の仕事の楽しさがより分かりました。大河はリハーサルの日があるんですけど、その段階で役者さんもスタッフさんも『ここはこうしたら?』とか、『この方がいい』とか意見を出し合うんです。監督もいい意見は誰が言ったものでも柔軟に取り入れていく。『あ、ものを作るってこういうことなんだ』と改めて気づいたし、面白いなって。この仕事をずっと続けていけたら楽しいなって想いました」。

いまは女優の仕事を楽しいといえるか聞いてみると、眉間にしわを寄せ「『演技って難しいな』と感じているところです(苦笑)」と渋い顔。「でも……」と言葉を続ける。

「みんながいいものを作ろうと嬉しそうな顔をしているのを見ると、幸せな仕事をしているんだなって感じます」。

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