配信開始日 2015年10月16日

「『007』最新作で話題の監督が過去に放った傑作。今からでも是非」ビースト・オブ・ノー・ネーション 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5『007』最新作で話題の監督が過去に放った傑作。今からでも是非

2021年10月18日
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『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』で何かと話題の監督、キャリー・ジョージ・フクナガが2015年に完成させた戦争ドラマで、Netflix初のオリジナル映画。脚本もフクナガが担当している。内戦が続く西アフリカの某国で、愛する家族と別れ別れになった少年、アグーが、政府軍の銃撃を逃れて反乱軍兵士になる。まだ幼い子供に死と隣り合わせの軍人の生活を強いる戦争の残酷と、反乱軍内部を蝕む退廃的なムードが強烈で、思わず見入ってしまった。これはただの戦争映画でも、少年の成長のドラマでもなく、まだ、世界のあちこちにいるはずの、祖国を奪われ、家族を奪われてビースト(野獣)と化すしかない若者たちへの鎮魂歌。画面から溢れ出る虚しさがしばらく心から消えて行かない。

撮影地ガーナでカメラマンが怪我を負ったことから、フクナガは監督、脚本、そして撮影監督と1人3役を担うことになった。撮影開始から完成までは実に7年。だからこそ、フクナガは公開まで苦難が多かった『007/NTTD』を不屈の精神で乗り切れたのだと思う。そういう意味で、恐らくバーバラ・ブロッコリの目は正しかったのだ。

清藤秀人