劇場公開日 2016年10月14日

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「愛し始めたのは妻ではない。」永い言い訳 さぽしゃさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0愛し始めたのは妻ではない。

2016年12月12日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

"妻が死んだ。
これっぽっちも泣けなかった。
そこから愛しはじめた。"

『永い言い訳』

(あらすじ)
交通事故で妻:夏子(深津絵里)を亡くした、小説家の幸夫(本木雅弘)。
しかし、夫婦間は冷めており、妻の死を悲しむことができない。
同じ事故で夏子の友人:ゆきも亡くなっており、その夫:陽一(竹原ピストル)の自暴自棄を目の辺りにし、自分とは全く違う妻への愛情に唖然とする。
そして、その利発な息子とその妹の世話をする過程で、幸夫にも新たな気付きが……。

冒頭、幸夫が夏子を罵るシーンで始まる。
小説家のPNは津村啓ですが、本名は衣笠幸夫。そう、鉄人:衣笠と読み方が同じなんです。

幸夫は夏子に、電話に出る時「衣笠」と名乗るな。
自分を「幸夫くん」と呼ぶな。あの鉄人と比べられる人生がどれだけ嫌だったか、分かるか?とくどくどと言い続けます。
夏子は「だって、昔から幸夫くんって呼んでるし、衣笠って名字、私は好き」と、涙目になって反論します。
このシーンで、健気な妻、捻れたコンプレックスを抱えている嫌な夫→その後、愛人(黒木華)登場で、可愛い奥さんいるのに、ひでぇ夫の図式となる。
で、奥さんが事故にあった時、幸夫は愛人とHしており。
あとは本作のキャッチ通り「妻が死んだ。これっぽっちも泣けなかった。そこから愛しはじめた。」となる。

トラック運転手であまり子供の世話ができない陽一の代わりに、幸夫はその役目を引き受ける。
それって観客には、幸夫のマネージャー曰く「子供を育てると、自分の今までの罪が帳消しになるような気がする」的な、つまり妻が死んだ瞬間に愛人とやってた自分の罪を浄化したい行いに思えるかも。贖罪ですね。
ただしですね、このキャッチをよくよく読むと、「そこから愛しはじめた」のが、妻だとは言ってないんですよ(笑)

やべ、ひっかかったー!

実は本作、妻の死は背景でしかありません。

だって中盤、夏子のスマホが復旧して、そこに「もう(幸夫を)愛してない」ってあるんですもん。妻も幸夫を愛してないし、幸夫も妻を愛してないんですよ。
相手は自分に醒めたまま逝ってしまったので、こっちだけ良かった思い出に浸って「愛し始める」ことできませんよね?
だから、今までの夏子との生活、殆ど思い出してませんし(笑)
じゃぁ、何を愛し始めたんでしょうね?
それは、冒頭のシーンが鍵ですよ!

『西川美和監督自ら書いたベストセラー小説を映画化した「永い言い訳」をみると、本当にこの監督は男を描かせたら一流だとわかる。一方、女性キャラは冒頭、あっという間に退場する。いかに女に興味がないかも良くわかる。』
某有名?映画批評家の方が、こう仰っていたけど。

女に興味がないというか、極めて女性目線で撮られた映画だと思いました。
西川監督が本作で描いている男達は、あくまで女性から見た理想の夫像じゃないでしょうか?
妻が急に死んで、夫の部屋は雑然とする。
夫は、愛人との関係に後ろめたさを感じる。
また、その愛人からは愛想尽かされ、孤独となる。
またはカップラーメンをすすり、子供達そっちのけで妻の不在を嘆き続ける。
新たな女性と出会うも、それは妻が安心するような家庭的なタイプ。
妻としては、自分がいなくなったら、夫にこうなって欲しい的な。
私の知人は、奥さんが死んだその夜に女の子をナンパしていましたよ。
いや、だからって、彼が奥さんの死を悲しんでいないわけではない。
悲しみの表現は、ひとそれぞれですからね。

登場人物に、いまいち魅力を感じませんでした。
もうちょっと、生々しい感情が渦巻いてるお話かと思ってたので。
唯一、生々しかったのは、もっくんの白いおけつと、マグロ状態の黒木華のシーンですかね(笑)
あと、なんだかんだで、もっくんかっけー!

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さぽ太