「あなたの知らないペットの世界」ペット　浮遊きびなごさんの映画レビュー（感想・評価）

『怪盗グル―の月泥棒』のイルミネーションスタジオ最新作。

優しい飼い主ケイティと楽しく毎日を過ごす小型犬マックス。
だがケイティが捨て犬デュークを連れてきてから生活は一変。
ケイティの愛情と主導権を勝ち取るためにいがみあう２匹は、
ケンカがもとで街で迷子になり、保健所送りにされそうに。
ならず者の元ペット軍団や、マックスに恋する
小犬ギジェットが率いる捜索隊も絡んで事態は大混乱。.
果たして２匹は無事に我が家へ辿り着けるのか？
といったあらすじ。

『～月泥棒』以降の同スタジオ作品はイマイチな
出来が続いていたと個人的には思っているのだけど、
イルミネーションスタジオ、ここにきて久々の快打！
『ペット』はヒジョーに面白い映画でした。
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予告編でも流れていた、飼い主がいない間に
好き放題やっているペット達の様子も勿論楽しいが、
その見せ場は最初の20分間でサクッと消化。
そこから先はマックスとデュークの大冒険の始まりだ。
複雑怪奇なニューヨークの街を舞台にしただけあり、
高いビルや狭い路地裏や暗い下水道や危険な車道を
上へ下へと駆け巡るアドベンチャー要素が楽しい楽しい。
ブルックリンブリッジでのド派手なチェイスや
カンフーアクション(笑)などの見せ場もバッチリ。
いがみ合っていた２人が、お互いを理解して
無二の親友になっていく展開にもウルッとくる。

楽しいキャラも山ほど登場！
人間を憎むもふもふ白ウサギは『モンティ・パイソン＆
ホーリー・グレイル』の殺人ウサギ以来の狂暴野郎だし、
友情と食欲のはざまで苦悶するワシ(笑)や、
ニューヨークを縦横無尽に行き来する長老犬
（ビリー・ワイルダー！）もユーモラスな好キャラ。

一番のお気に入りは、情熱のパッション溢れるギジェット。
可愛い顔したお嬢様犬なのに、マックスのためなら
鬼のように強くなるスーパーヒロインぶりが素敵。
しかもあれだけ頑張っても、自分の想いを押し付ける
ような真似をしないなんて、なんて健気な子かしら。
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例えばピクサー作品は作り込まれた世界観や上質なユーモア、
大人の鑑賞に耐え得るドラマを毎回まとめ上げてくるが、
他方イルミネーション作品は、より笑いに徹した作りが特徴的。
笑いの中にテーマを埋め込むというのはやはり匙加減が
難しいものだけど、本作はこの点でも成功していると思う。

捨てられたペット達の悲しさ、動物を扱う人間の身勝手さ……。
そんな重い要素を滲ませつつ、説教臭くも辛気臭くも
ならずに物語の勢いを削がなかったこの塩梅が絶妙。
それに、本筋にはほとんど絡まない飼い主ケイティが
それでも印象に残るのは、ケイティとは真逆な飼い主の
せいで人間に怒りを抱く動物たちが登場するが故だし、
短い出番だけでも彼女の優しさが伝わってくるからだ。
デュークの前の飼い主、あの小さな女の子、
そしてラストで初めて顔を見せる飼い主たちが、
ペット達に向ける暖かな表情。
あの表情たちが、人間の側にとっても
ペットがいかに大切な存在かを示してくれる。
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動物を飼っている方、飼った事のある方であれば、
この映画で笑って笑って家に帰った後、「やっぱり
動物は大切にしなきゃ」という気持ちに駆られるはず。
元々ペットが大好きな方ならなおさら、自宅で貴方を
待っているペット達を抱きしめたくなるはず。

笑えるユーモアは満載だが、単なるギャグ映画に非ず。
子どもにも大人にも気持ち良い後味を残してくれる快作だ。
続編製作も決定との事で、今から楽しみ。

<2016.08.20鑑賞>
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余談：
声優さんの良し悪しってそこまで分からないのだけど、
主役２匹の声を務めたバナナマンの２人は、
意外や意外、結構上手くないですか？　驚いた。