劇場公開日 2016年7月9日

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「ファンタジーになってしまった」インデペンデンス・デイ リサージェンス アラカンさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0ファンタジーになってしまった

2016年8月25日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

20 年ぶりの続編というので楽しみにしていたのだが,まるで,不本意な思いで 20 年前に送り出したお笑いしか取り柄のないような卒業生に,20 年ぶりに会ってみたら,立派になっているどころか,馬鹿さに拍車がかかっていたというような感じを受けた。

まず,私は続編と言えども独立した作品なのであるから,続編の方から見た人でも人物関係がちゃんと分かって,世界観にすぐ浸れるような作品を評価するのだが,この映画は完全に前作を見ていることを前提として作ってあるようで,まるで前期の単位を取得していないと後期の講義が受けられないような作りになっていたのには心底がっかりした。私は前作を見ているのだが,それでもこの人誰だっけ?という状態に陥ることがしばしばであった。全く不親切という他はない。

映像は CG が惜しみなく使われているのだが,むしろリアリティを下げる方にばかり貢献していたように思えてならない。脚本がとにかく酷かった。前作は都市を覆うほど大きくて強力な宇宙船が登場して,それにどうやったら勝てるのかという興味で見る者を牽引していたように思うのだが,今作では,前作の宇宙船と宇宙人が捕まえられていて,人類はそれを 20 年かかって研究して,重力を自由に扱えるようになったという冒頭の説明でまず酷い地雷臭がした。宇宙人の武器や言葉も解析してあるというのだから,もう現在の地球が舞台ではないとのっけから言ってるようなものである。

なのに,冒頭で砂漠を疾走する調査団が乗っているのが4輪駆動の普通のジープであったりするのはどういうことかと面食らってしまったし,重力が操れるなら戦闘機に翼など不要であるはずなのに,しっかりデルタウイングのデザインになっていたりするのが違和感をますます増大させ,大気のない月面での戦闘シーンで翼を持った戦闘機が飛ぶというのはむしろとんでもなく違和感を放っていた。何といってもずっこけたのが,宇宙人が地球を襲った理由とである。もしそれをやられてしまうと,地球から大気がなくなって生物が絶滅するというのだが,どう考えてもそんな馬鹿な,としか思えなかった。

登場人物は,前作からほとんどの人が出て来ていて,流石に 20 年の時間経過を感じさせる老け方をしていたが,主人公の父の船釣り好きのじーさんが前作からほとんど変わっていなかったのにはビックリした。前作の登場人物に加えて今作での新キャラが加わることになるので,無駄なキャラクターがやたら多いという気がしてならなかった。それぞれ見せ場は用意してあるものの,薄っぺらな人物背景しか与えられていないために,全く印象に残らなかったのは,偏に脚本と演出の失敗であると思う。また,登場人物の間にやたら血縁者が多かったのも薄気味悪さを感じさせていた。

音楽は前作のデヴィッド・アーノルドから別な人になっていたため,あの有名なテーマがエンドクレジットでしか流れなかったというのも肩すかしであった。演出面では,月面用の宇宙船で平気で地球まで飛んで来れたり,月と地球の間で電波の往復に2秒ほど要するというのに,隣の家と電話で話しているかのような描写を見るにつけ,この監督はどれだけ真面目に物理的な描写をする気があるのかと呆れ返るばかりであった。また,支那の女性パイロットや,支那製の牛乳などをやたら映像的に推していたのには,何か裏取引でもあるのではという疑惑すら感じるほどであった。あれだけ面白かった「ホワイトハウス・ダウン」と同じ監督とは到底思えなかった。全くお薦めする気になれない。人類の5千年分の進歩に相当するアイテムなどというのも出て来てしまったので,もはや続編はないだろうし,あったとしても私は見るつもりにはなれない。
(映像5+脚本1+役者3+音楽3+演出2)×4= 56 点

アラカン