劇場公開日 2016年11月12日

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「尋常ならざる秀逸さは奇跡」この世界の片隅に ロンロンさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0尋常ならざる秀逸さは奇跡

2017年10月10日
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アニメ映画「この世界の片隅に」を観た後のえもいえぬ感動は、過去のすべての映画の概念を覆すものでした。えもいえぬ、つまりコトバで表現することは野暮だと思うほどのものです。私自身還暦となり、これまで観た1000本以上の映画に、この作品に比するものは見当たらない。何故そんな感動が得られるのか、そのコトバを探そうと地元の映画館3館で7度鑑賞しました。一つの作品にそこまで魅せられた事は初めてでした。スクリーンの大きさや音響設備も異なる環境で鑑賞し、その都度発見される小さな事柄にも何故だか凄く喜びを感じ、得した気分を味わい。原作も読み、他のグッズやサウンドトラックもブルーレイも購入し見たり聴いたり、そんな事をしても、私のコトバは陳腐な表現しか思いつきません。この映画は総合芸術の最高位にあると私は感じています。例として挙げるならば長谷川等伯の「松林図屏風」を目の当たりにして、立ち尽くすだけしか出来ないという気分に似ています。これはもはや国宝級だということです。
普遍的価値を持つ芸術作品に理屈はいらないのですね。
海外では「火垂るの墓」と較べられているようですが少なくとも日本人である私にとっては、全く異質な完成度の違いを歴然と感じるのは、この作品の成り立ちを日本人として充分に理解し、その感動を、より多くの人達と末長く共有したいと願うからです。
その為、この映画は毎年一度は大きなスクリーンで鑑賞したいのです。毎年の8月の恒例行事となるよう願ってやみません。
抜けるような青空、コトリンゴさんの歌が流れる。もう涙が出てしまう。この作品に関わった方々に感謝です。ありがとうございます。

ロンロン