劇場公開日 2015年6月6日

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「役人もたまにはいいことをする」おかあさんの木 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0役人もたまにはいいことをする

2020年8月12日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 最も泣けるところは序盤、謙次郎からミツへの恋文だった。そこからは怒涛の展開。息子ばかりが次々と生まれ、息子7人(一人は養子に出したので6人)。さらに徴兵により次々と戦地へと送られるという悲劇が描かれていました。

 役人兵事係のおっさんが死神のように見える演出だった。それでも村長はじめ、村の人たちは祝って見送る光景。戦争映画にはよく出てくるのですが、これが7人の息子全員というのはあまりにも残酷だと思う。

 戦争に疑問を持っている大人が数人。田辺誠一演ずる郵便局長、非国民として逃げ回る青年、二郎(三浦貴大)の上官も「生きて帰れ」と言ってたりする。どうしてもこの辺りの描き方不足のため、ただただ涙を誘うように持っていこうとする作り方が残念でならない。

 序盤以外で泣けたのは、養子に出した誠がミツのところへ挨拶に来るシーンだっただろうか。ミツは当然のように実の母親であることを隠していたつもりなのに、立ち去るときに彼が「おかあさん」と呟いたところだ。

 字が読めないミツ。愛国の母としても取材され、これ以上家族を引き裂かないで欲しいと思っていても召集令状による残酷な仕打ちはやって来るのだ。ところどころに戦争シーンを入れるよりも、戦争末期の狂った大本営をも描いてくれた方が真に迫ってたかもしれない。「猫ぐらい逃がしてあげたら・・・」という台詞をも引き出す、猫や馬まで供出させられたエピソードは良かった(神戸さんもナイス)。

kossy