劇場公開日 2015年11月14日

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「古典的な設定と大味な演技に...」恋人たち Cディレクターシネオの最新映画レビューさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0古典的な設定と大味な演技に...

2016年5月23日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

怖い

単純

予告編に興味がそそられたし、
レビューが高評価なので、
大好きなテアトル新宿へ。

映画では社会に絶望的な
3人が描かれていますが、
特にメインの主人公アツシを、
妙に俯瞰で観てしまいました。
通り魔殺人に妻を殺された男という、
映画では古典的な設定だからかなぁ。

そんな題材を敢えてリアルに振り切った、
監督と役者の意気込みは分かるけど、
すでに絶望がお膳立てられていて
リアルに感じないのです。

他の下層主婦やゲイ弁護士の設定も、
なんかおざなりな感じ。
そして何より、落ちきれていない。
物語でこの程度じゃ、魂は揺さぶられませんでした。
「それでも人は、生きていく」という
コピー自体が、ピンとこない。

日本の社会はやりきれなくて、
人々は折り合いを付けて生きている。
全てをぶち壊すこともできるけど、
秩序の中でぐっと抑えている。
希薄な人間関係の中で、
境遇を変えてくれる救いなんて何も起きない。
けどそんな絶望を感じたいなら、
僕はドキュメンタリーの方がよっぽど泣ける。

3人の、聞き手が不在の
「一人語り」の独白演出も、
物語で感動させようという作為が見えました。
このようなタブー演出や
無駄な印象づけシーン(乳もみや排尿)や長回しなど、
そんな演出の珍しさが高評価に繋がるのかな。
残念ながら僕にはよく分かりませんでした。

演じているのは、
ワークショップで発掘された新人さんのよう。
主人公のアツシさんは体当たりだったけど、
どの演技も感情をぶつけるだけの大味さ。
行間や心のヒダを演じる
プロとの差を感じてしまいました。

せめて3人の関わりの妙にも期待しましたが、
ほぼ無意味な浅さでしたね。
そしてラストの青空には、
さすがに希望へとツジツマを合わせてきて、
白けてしまいました。

けどアツシの先輩役の黒田大輔 さんは、
すごい存在感でしたね。
彼の台詞はかなり響きました。
話を聞いてあげるという当たり前の行為が、
とても大切だと気づかせてもらえます。
唯一の収穫でした。

映画のリアルって難しいですね。
やっぱり嘘になっちゃうんなら、
僕はいっそ夢や希望をもらいたいのかな。
まぁマイノリティの意見ですから、
気にしないでください。

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