劇場公開日 2016年5月14日

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「くだらない世の中で 切なく生きている人へ」世界から猫が消えたなら Cディレクターシネオの最新映画レビューさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0くだらない世の中で 切なく生きている人へ

2016年5月23日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

幸せ

先日観たのですが、

今でも不思議な余韻を楽しんでいます。

なんで僕たちは、普段の大切な幸せに、

気づかないで生きているんだろう。

「死」をテーマに、

こんなことを教えてくれる映画はたくさんあるけど、

斬新なアプローチが面白かった。

世の中にあふれるモノたちや、

愛猫と思い出がリンクして、

家族や友人や恋人への想いが蘇る。

かけがえのない人、愛おしかった時間、

本当に大切だった関係...。

そして自分を作っていたのは

その全てだったと気づいて、

清々しく死をむかえる。

そのシチュエーション全てにおいて、

自分に置き換えて涙が溢れてくるんです。

この作品はメッセージを自分で咀嚼して、

想いを巡らせる映画。

だから賛否両論あるのでしょう。

時系列はあやふやで、決してわかりやすくはない。

けど行間読ませる映画って、好きですけどね。

自分で言うのも何ですが(笑)

きちんと生きてきた人は、

とても胸に響いてくるんじゃないかなぁ。

佐藤健くんが演じた、

無垢で純粋な青年と、

毒のある悪魔の対比が素晴らしかった。

二役のギミックはとても難しかっただろうけど、

やりすぎない絶妙さと生々しさで、

安っぽいファンタジーにならなかった。

表情のニュアンスが繊細で、

いろんな性格に見せれるのは力量ですね。

実は昔、TVCMのお仕事で

ご一緒したことがあるんだけど、

すごくマジメで努力の人。

けどその汗を感じさせないとこがいい。

この作品もかなりのプレッシャーだったと思うけど、

ピュアでアンニュイな持ち味がだせて、

また一つ大きい俳優になりましたね。

応援してます。

もちろん濱田岳さん、原田美枝子さん、

奥田瑛二さんら名優が脇を固めて、

作品が奥深いものになっています。

どの演技にも、泣きポイントが!

あとね、函館と札幌の街並みが

ノスタルジックでよかった。

邦画の醍醐味ですね。

あの映画館は本当にあるのかなぁ。

映像粒子のトーンが切なかったし、

手持ち感も生きている時間の息遣いを感じた。

ロケーションが計算されつくされていて、

それを生かした構図とりもいい感じ。

カメラがうまかったです。

こんなくだらなく切ない世の中で、

毎日が退屈でちっともいいことなんかなくて、

自分って存在は何なのかな?

なんて思ってる人は(笑)ぜひ観たほうがいい。

今までの人生、

様々な人が支えてくれてることに気づけて、

そんなに捨てたもんじゃないと

想えるはずだから。

そして次のお母さんの誕生日には、

お花を贈りたくなるでしょう(笑)

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