劇場公開日 2016年1月23日

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「黄金色に光り輝く2つのタワーがニューヨークにあったという事実」ザ・ウォーク ao-kさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0黄金色に光り輝く2つのタワーがニューヨークにあったという事実

2016年3月1日
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鑑賞方法:映画館

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アメリカ同時多発テロ事件から今年で15年になる。報道番組が伝えたあの日のニュース映像は決して忘れることはできないが、映画やテレビで映し出されるツインタワー(ワールド・トレードセンター)のない摩天楼も随分と見慣れた景色に映るようになってきた。しかし、この『ザ・ウォーク』という作品はスクリーンにかつてのニューヨークの姿を蘇らせる。それも、美しく、誇り高く…。

これはツインタワーの間にワイヤーを架け、命綱なしで綱渡りをしたという大道芸人・フィリップ・プティの信じられない挑戦を描いた実話に基づく物語である。正直この手の映画を作るのは難しい。事実に側しようとするあまり、説明臭くなってしまうことが多いからだ。しかし、ゼメキスという監督はこの物語をスパイ映画風に味付けする。ビルの間で綱渡りをするなど、犯罪行為だ。警察に見つかったら計画はおしまいだ。故にプティは綿密な計画を企てる。個々の才能を活かした役割分担、変装、潜入、そして、実行…。あえて『ミッション・インポッシブル』を意識したと思しき音楽もそれぞれのシーンを盛り上げる。

言うまでもなく、最大の見せ場ではビルの間での綱渡りシーンである。2つのタワーの間に架けられたワイヤーの上を一歩、また一歩と歩いていく。高所恐怖症の方お断りと言わんばかりのシーンの連続に、息を飲み、手に汗を握る。

なぜ彼はそんな無謀な挑戦をするのか?映画の中で答えは語られないが、ただやってみたい、という意思の下で若者たちが夢中になって挑んでいく姿に胸躍る。これは言わば、アメリカンドリームだ。1974年、彼の挑戦をニューヨーク中が注目し、誰もがツインタワーに目を向けた。そして、彼の挑戦こそがツインタワーをニューヨークのシンボルにしたのである。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』、『フォレスト・ガンプ』などを見れば分かる通り、ゼメキスは古き良きアメリカを美しく伝える“歴史教師”でもある。映画はプティの挑戦を高らかに讃えあげる。そして、かつてニューヨークに黄金色に光り輝く2つのタワーがそびえ立っていたという事実を観客に伝えてくれるのである。

Ao-aO