劇場公開日 2014年11月29日

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くるみ割り人形 : インタビュー

2014年11月29日更新
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有村架純&松坂桃李が実感した「命を吹き込む」ことの重さ

「命を吹き込む」。アニメーションに声を入れる作業を表現する言葉として、たびたび使われるが、「くるみ割り人形」で主人公クララ、王子フランツの声優を務めた有村架純と松坂桃李も、その過程でこの言葉の重さを実感したようだ。(取材・文・写真/黒豆直樹)

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1979年に世界三大バレエのひとつとしても知られる「くるみ割り人形」を、人形アニメーションで映画化。今回、このオリジナル版に最先端のデジタル技術を駆使して製作された新たなパートを融合させ、3DCGによる極彩色ミュージカルを生み出した。

35年前に手作りで製作された名作を新たな形でよみがえらせる。松坂はそこにもの作りの“ロマン”ともいうべき匂いを感じ、強く心ひかれた。「すでに35年前にある『くるみ割り人形』が、現代の技術を使用してもう一度、新たな命を与えられる。それは素晴らしいことだと思うし、最初に話をいただいたときは、テンションが上がりました」。

有村は今年、スタジオジブリの「思い出のマーニー」のヒロイン役で声優に初めて挑戦したが、この経験があったからこそ、本作に対して「普通のアニメとはまた違う、人形アニメーションという部分がすごく大きい。人形ならではの世界観、人形だからこそ表現できる作品性があると思います」と新たな魅力を感じることが出来たと語る。

さらに有村は、35年の時を経て新たに加わった最新の3Dの技術に関しても、それが人形の魅力を引き出し、文字通り作品に“深み”を与えていると熱く語る。「クララの“巻き込まれる”という感覚を強く感じてもらえると思います。監督(増田セバスチャン)は、オープニングの柱時計が開いて、その中に入っていくというシーンをすごく大切にされていて、これまでのように『飛び出す』のではなく、『顔を突っ込んで中の世界をのぞき見する』3Dにしたいということをおっしゃっていたんですが、それが見事に表現されていると思います」。

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実写の映画やドラマとは異なり、アニメーションでは有村や松坂が声で演技をするのは、製作過程の中盤から終盤であり、語弊を怖れずに言えば、ごく一部分にすぎない。本作で言うと、35年前に作られた人形アニメのパートは、1コマずつ人形を動かすため、1日でわずか3秒分しか撮影できず、5年の歳月をかけて製作された。こうした作業の“重み”、出来上がったキャラクターに声を吹き込むという責任をひしひしと感じながら、2人は収録に臨んだ。松坂は言う。

「普段の僕らの仕事は、台本をいただいた時はまだ『1』の段階であることが多いけど、声優のお仕事ではその時点で既に『5』とか『6』の段階にある。そこにたどり着くまでにどれほどの苦労が積み重なってきたかということも考えさせられるし、アフレコで、それまでに作り上げられてきたキャラクターの感情や想い、スタッフの意図を読み取って演技をするというのは面白さと難しさの両面がある。それは声優ならではの経験ですね」。

有村も「ひとつの動きのために、少しずつ少しずつ人形を手で動かして作っていく。そういう作業があるからこそ、この作品にリアリティや温かみが感じられるんだろうと思うし、作り手の愛情が画面からにじみ出ていると思います」と同調する。

2人の言葉に、“命を吹き込む”のは決して、声優の声によってのみ行われるのではなく、アニメーションに携わる全ての作業がその一部を担っているのだと、改めて気づかされる。

余談だが、2人はこの日が初対面。アフレコ収録は別々に行われており、また過去にWOWOWのドラマ「チキンレース」に出演しているものの、直接の共演シーンはなく、文字通りこの日が「はじめまして」だった。共に忙しい1年を過ごしてきたのは言うに及ばず。

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「あまちゃん」後の真価が問われるこの1年で、有村は短編1本を含む4本の映画と3本の連続ドラマに出演し、さらにその合間を縫うように「ジャンヌダルク」で初舞台も踏んだ。すさまじいまでの過密スケジュールがうかがえるが、当人はそれさえも楽しむ強いハートをのぞかせる。

「私は元々、女優になりたくて自分でオーディションを受けてこの世界に入ったので。デビューしてからずっと変わらない思いでやって来ましたし、そういう気持ちが『あまちゃん』の春子という役との出合いを導いてくれたのかなと思っています。周囲の反応や環境の変化はあるかもしれませんが、仕事に臨む意識もやり方も変わってないですし、これからも変えたくないです。悩むことの方が多いですが(笑)、いまは楽しいです」。

松坂がお茶の間での認知度を高めるきっかけとなった「梅ちゃん先生」に出演したのが、2012年。その後の活躍は周知のところだが、今年は「軍師官兵衛」で大河ドラマ出演も果たした。「やればやるほど足りないものが出てくる」と語る表情は有村同様にやはり、楽しげだ。

「一番嬉しいのは、現場ごとに新たに出会える人たちがいること。そうした方々に刺激をいただいて、という繰り返しが楽しい。だからこそいまは、興味を持ったらどんな仕事でもやりたいし、どんな忙しい環境の中でも好奇心を失わずに持ち続けたい」。

3度目の正直で、2人が直接、会話を交わすシーンが見られる機会を期待して待ちたい。

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