劇場公開日 2015年2月20日

  • 予告編を見る

「小さな無限と大きな無限」きっと、星のせいじゃない。 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5小さな無限と大きな無限

2021年1月9日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 ガン患者であるティーンネイジャーの悲恋と言ってしまえばそれまでなのですが、数学的・哲学的に奥の深いうんちくに溢れている作品でした。難病モノといえば必ず泣けると思っていたけど、先の短い人生におけるモチベーションには若者の発想ながら人生訓を教えてもらった気分になりました。

 人を愛することができた喜び。永遠という名の無限の愛。死を迎えるにあたって納得のいく人生だったかと、今のうちから考えておかないと全て無駄になってしまいそうな、反省ばかりの自分と比べてしまいました。

 アンセル・エルゴート演ずるガス。後に『ベイビードライバー』で華麗なドライブテクニックを披露するものの、今作では下手で荒い運転のエルゴート。骨肉腫を克服するために右脚を切断し、義足という理由もあるのだろうけど、ついつい比較してしまった。そんな彼の言う“忘却”とは「人に忘れられることの不安」。自分が生きた証しを残したいという気持ちが痛いほど伝わってくる。功績や名誉などではなく、ヘイゼルを愛するという偉業を達成できた。また、火を点けないくわえタバコで「殺す力を与えないメタファーなんだよ」と、何かある度にタバコをくわえる仕草が印象に残る。“死”と闘ってる姿。この行為も人の心に残るものだ。

 「トロッコ問題を知ってるか?」などと相手を煙に巻く小説家ピーター・ヴァン・ホーテン。オランダに住むこと自体、自身がアメリカ人でありながらアメリカ人を嫌ってる偏屈な男。これをウィレム・デフォーが怪演している。せっかく結末を教えてもらいにきたヘイゼルとガスに対して差別的とも思える発言で嫌われてしまうが、これもトロッコ問題の解決法の一つなのか?その辺りはわからなかった。ホーテンの存在がストーリー全体の中のアクセントになってることは間違いないけど、ガスがその後のメールのやり取りを含めて満足できたのだろうか・・・疑問。

 人はそれぞれ頭の中に小宇宙を持っているのだと思う。その無限と無限が繋がったとき、永遠に続く愛によって幸福感に満たされるのだろう。家族の宇宙、恋人、友人の宇宙、誰にも邪魔はさせないぞ!今、こちらは大雪なので、映画を見ながら自分の小さな無限宇宙の中に引きこります。

kossy
everglazeさんのコメント
2021年1月9日

最後の哲学が素晴らしいですね✨

everglaze