劇場公開日 2015年1月23日

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「大きな瞳は真実を見ていた」ビッグ・アイズ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0大きな瞳は真実を見ていた

2015年8月7日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

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「エド・ウッド」以来となるティム・バートンの非ファンタジー映画。
「エド・ウッド」がティム・バートン作品myナンバー1なので期待を寄せていた。

1950~60年代にかけて人気を博した大きな瞳の少女の絵画“BIG EYES”。
本当の作者はウォルター・キーンではなく、その妻マーガレット・キーンだった!
絵画を巡って起こった一大スキャンダル…!

大傑作!…とまではいかないが、なかなかの佳作。アメリカでの不発が残念。
自分もそうだが、“BIG EYES”について全くの無知でもすんなり見れる内容になっている。
人間ドラマに徹していつものバートン色は薄められているが、周囲の人間が“BIG EYES”に見えたり、美しい映像などバートン・ファンタジーが隠し味的に加えられている。
内向的な妻=社会の日陰の存在・弱者からの視点もバートン作品に通じる。

女性の社会的地位が低かった時代。
今なら高らかに声を上げる事が出来るが、それが出来なかったのは、そんな社会背景やマーガレット自身の内気な性格もあるだろうが、“BIG EYES”を世間に広めてくれたきっかけである夫への愛情や恩義も最初の内はあったと思う。
しかし、夫はアーティスト気取りで口だけ達者、絵画をプリントして安く売り出す金儲けに目が眩み、芸術の価値を下げ…夫への不満が積もっていく。
自分の絵が自分の絵じゃなくなっていく。
自分の感情を唯一表現出来るものが奪われ、精神が病んでもおかしくない。
このスキャンダル、当時の社会背景や当事者たちの性格が悪い方向にこんがらがって起きたと感じた。

さすが演技巧者である主演の二人!
エイミー・アダムスが、控え目ながらも自分の絵への強い愛情を内に込め、好演。
クリストフ・ヴァルツが、笑いさえ込み上げるゲス野郎。その嫌みっぷりはマーガレット本人もお墨付き。

日本でも“ゴーストライター事件”が話題になったのは記憶に新しい。
どんなに世間を欺こうとも、大きな瞳は真実を見ていた。

近大